日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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牛のレチノール輸送形態の検討および牛血清レチノール結合タンパク質の精製
宮本 亨加藤 憲夫元井 葭子大橋 傳長沢 成吉新林 恒一
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1989 年 51 巻 2 号 p. 408-415

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抄録
牛のレチノール輸送形態について検討し,牛血清からのレチノール結合タンパク質(RBP)の精製およびその性状の検討を行った.成牛血清についてSephadex G-100によるゲルろ過を行ったところ,レチノールを含む2つのピーク(ピーク1,ピーク2)が得られた.主要ピークであるピーク1は,より高分子側にあり,RPBおよびプレアルブミン(PA)から成るヒト血清のレチノール分画に一致した.ピーク2はより低分子側(分子量約20,000)にあり,ヒト血清中には一致する分画はなかった.3M尿素存在下においてピーク1はほとんど消失し,ピーク2が増加した.一方,子牛血清の主要レチノールピークは成牛のピーク2に一致した.以上の結果から,レチノールは,成牛ではRBPと他との血清タンパク質,おそらくPAとの複合体によって輸送されていると考えられた.牛RBPの精製は次の4本のカラムによって行った.1. DEAE-cellulose(pH6.0), 2. SephadexG-100 (3M尿素を含む), 3. DEAE-cellulose (pH8.3), 4. SephadexG-100.最終的に,牛血清1,100mlから14.1mgの牛RBPが得られ,回収率は約32%と推定された.牛RBPの分子量,紫外部吸収スペクトル,電気泳動における挙動,アミノ酸組成は,他の動物種のものと同様であった.
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© 社団法人 日本獣医学会
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