抄録
百日咳毒素(PT)の糖特異性を調べるため, PTおよびヒト赤血球を用いて凝集, 凝集阻止反応および結合阻止反応を行った. PTの凝集活性, 結合能は赤血球のノイラミニダーゼ処理により末端のシアル酸を除去することによって著しく低下したが, 未処理赤血球にシアル酸を添加した場合これら両活性の阻止は認められなかった. 単糖, 二糖, N-アセチルラクトサミンではPTの凝集, 結合能を阻止することはできなかったが, 糖蛋白によりこれら両活性は阻止することができた. 糖特異性の明らかなレクチンを阻止物質として用いた場合, PTの赤血球に対する結合を阻止することはできなかった. 一方, PTと糖特異性が類似であると報告されているRicinus communis agglutinin (RCA-1)の凝集, 結合能を検討すると, シアル酸の除去による凝集能の変化は認められず, また凝集, 結合活性は単糖, 二糖, N-アセチルラクトサミン, 糖蛋白で阻止された. これらの成績から, PTは既知のレクチンが認識しえないような細胞表面上のシアル酸を含む糖側鎖構造を認識しうる可能性が示唆された.