抄録
創傷性心膜炎牛を剖検所見に基づき繊維素性, 漿液繊維素性, および化膿性心膜炎の3病型に分類し, 血清蛋白濃度および血清蛋白電気泳動所見の診断的意義について検討した. 軽度の低蛋白血症, やや重度の低アルブミン血症, 軽度のαグロブリン濃度の増加, およびβグロブリン濃度の増加傾向が3病型に共通して見られた. γグロブリン濃度は繊維素性および漿液繊維素性心膜炎において減少傾向にある反面, 化膿性心膜炎においては増加傾向にあった. したがって, 化膿性心膜炎を除き, 創傷性心膜炎の血清蛋白分画像は血清蛋白質の非選択性漏出を伴った亜急性炎症型であるといえる. また, その血清蛋白電気泳動図には疾病特異性の高い所見がみられた. すなわち, 細身のアルブミン峰, アルブミン側に主峰を有する鋭角的な2峰性αグロブリン峰の隆起, さらにβグロブリン峰の隆起傾向, しばしば確認される相対易動度の増加, ならびにβおよびγグロブリン峰間に深く広い陥凹を示す傾向によって特徴付けられるものであった. 一方, 化膿性心膜炎では細身のアルブミン峰を除き, これらの所見は不明瞭であるか, または見られず, 一般的な慢性炎症型血清蛋白分画像との鑑別は困難であった.