抄録
ウシ白血病ウイルス感染B細胞性リンパ腫細胞株(BL2M3及びBL312)の培養上清の自己細胞株に対する効果についてヒトの各種サイトカインによる増殖効果と比較して解析した. その結果, BL2M3およびBL312細胞のいずれの培養上清にもBL2M3細胞の増殖促進効果が認められた. これらの培養上清中のBL2M3細胞増殖促進因子(BL2M3-GPF)の生化学的性状について検討したところ, BL2M3-GPF活性はpH2の酸およびpH10のアルカリ処理で失活し, また, 60℃, 30分間の熱処理でも失活した. BL2M3細胞はBL2M3-GPFを添加して培養すると単細胞の状態で増殖したのに対し精製low molecular weight B-cell growth factor(LMW-BCGF)を添加した場合, 集塊を形成して増殖した. 一方, IL1-αおよびβ, IL2, IL6, 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)ならびに腫瘍壊死因子(TNF)αはいずれもBL2M3細胞の増殖を促進しなかった. 以上のことから, BLV感染リンパ芽球様B細胞株は既知のIL1, IL2, IL6, G-CSF, TNF-αおよびLMW-BCGFとは異なるBL2M3-GPFを産生し, そのBL2M3-GPFに反応して増殖することが示された.