抄録
ジャワマメジカはの(Tragulus javanicus)胃の構造を肉眼, 実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した. 胃は, 第一胃(Rumen), 第二胃(Reticulum)および第四胃(Abomasum)からなり, 第三胃(Omasum)は欠いていた. 第一胃は, 後背盲嚢を欠き, 背嚢, 腹嚢および後腹盲嚢によるS字状を呈していた. 第二胃は第四胃よりも大きかった. 第一胃の粘膜面は, 様々な大きさおよび密度を示す葉状あるいは舌状の第一胃乳頭で覆われていた. 第二胃は, 第二胃小室を形成するが, 二次稜はまれにしか認められなかった. 第二胃溝は大きな唇部を有し, 前部よりも後部で発達していた. 第二胃溝と第四胃の間に認められた小嚢状の移行部(Transition zone)の粘膜には, 多くの粘膜ヒダが認められた. 第四胃には, 低く厚みのある螺旋状の粘膜ヒダが認められた.