1992 年 54 巻 6 号 p. 1077-1080
外見上ならびに解剖学的に雌の特徴をもつものの, 生後23か月に至るまで発情徴候を示さなかった未経産のホルスタイン種牛について, 染色体の分析とY染色体の構造解析を行った. 染色体分析の結果, 白血球ならびに皮膚, 脾臓, 腎臓からの線維芽細胞に由来するすべての細胞分裂中期像で, 60, XYの雄の核型のみが観察された. 臨床所見とこれらの結果から本例はXY femaleと診断された. 更に, サザーン・ブロッティングによるZFY遺伝子とAMG遺伝子のY染色体上の局在の有無を検索した結果, 両遺伝子は正常な雄牛と同様, 本例のY染色体上にも存在することが確認された. 以上の結果に基付いて, この牛がY染色体をもちながら雄へ分化しなかった原因について, Y染色体上の精巣決定遺伝子(TEF)の変異に関する3つの仮説を立て, 考察した.