Journal of Veterinary Medical Science
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山羊精子細胞の微細構造 : 中心子附属体(centriolar adjunct)の位置と機能
小島 義夫
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1994 年 56 巻 2 号 p. 259-267

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抄録

ヤクシマ系山羊18頭の精巣を灌流固定し, 型の如く包埋・切片として電顕で調べた. 性細胞の中心子の対は減数分裂終了後, 精子細胞の核周辺, ゴルジ複合体近辺に位置するが, ゴルジ期には細胞膜に接近し, 頭帽期には核に附着する. 中心子の対の核への附着は, 核質表層に壁龕(niche)を形成し, はまり込む形で密着する. この時期からアクロゾーム期へかけて, 構成細胞等の膜系統と微細繊維等の細胞骨格の働きにより, 精子細胞の頭帽部が精細管基底膜方向へ, 尾部が管腔方向へと修正され定位が保たれる. アクロゾーム期では微小管群から成る外套(manchette)の働き等で頭部が整形される. この時期に頭部に陥合した近位中心子から中心子附属体(centriolar adjunct)が伸び出す. 附属体は遠位中心子(尾軸)に対してやや鋭角を成し, 約1μm程の長さまで頭部側面方向へ伸長し, 頭部整形の終るアクロゾーム後期に急速に消失する. 近位中心子とその附属体は, 結果として扁平な精子頭部の扁平方向と常に平行し, 遠位中心子由来の尾部軸蕊(2+9n+9本の繊維から成る)のNo.9繊維の方向と平行する. すなわち, 中心微細管対を両断する面と直交する面に対して一定して約25°の角度をもって横たわる(n=58). この配置は豚精子細胞でも同様な傾向があり, 附属体が頭部整形(扁平の方向)を先導していることが示唆され, 尾部鞭打運動との関係で, 精子の運動について重要な問題を提示している.

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