ラット胃輪走筋におけるKCl, カルバコール(CCh)及びカフェイン収縮に対するダントロレンの作用を調べた. ダントロレンはKCl及びCCh収縮を濃度依存性に抑制したがカフェイン収縮には影響を与えなかった. 細胞内Caストアを涸渇させた標本でKClとCa又はCChとCaの同時適用により持続性収縮が生じ, 前者はニフェジピンによりほぼ完全に, 後者は部分的に抑制された. ダントロレンはこのKClとCa適用並びにニフェジピン存在下でのCChとCa適用による収縮を共に抑制した. これに対して, 細胞外Ca除去液中で見られるカフェイン収縮及びCCh収縮にはダントロレンは影響を与えなかった. 又, スキンド筋標本におけるCa収縮に対してもダントロレンは抑制作用を示さなかった. 以上の成績より, ダントロレンはラット胃平滑筋において, 細胞内CaストアからのCa放出機構及び筋収縮系に対する抑制作用はなく, ニフェジピン感受性及び耐性経路を介するCa流入を抑制することにより, KClやCCh収縮を抑制することが示唆された.