突然死型乳頭糞線虫症への乳頭糞線虫寄生雌虫の関与について調べた.感染幼虫の経皮暴露により子羊が子牛と同様の感受性および経過で心臓突然死することを予備試験で確認し,子羊を用いて本試験を実施した.感染ウサギから寄生雌虫を回収し,子羊の十二指腸内に生虫体を移入,あるいは虫体乳剤を接種した.生虫体移入例では移入直後より持続性洞性頻脈が起こり,感染幼虫の経皮暴露例と同様のパターンで心室細動による心臓突然死が発現した.死亡時の盲腸便からは多数の虫卵が検出された. 虫体乳剤接種例には致死性不整脈は生じなかった.以上の結果より,移行幼虫の存在・不在にかかわらず,小腸内の寄生雌虫のみで本症が発現することが明らかになった. ざらに,寄生雌虫の虫体構成成分ではなく,生虫体の物理的作用あるいは産物が発症の原因であることが示唆された.