Journal of Veterinary Medical Science
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56 巻, 4 号
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  • 江島 博康, 野村 耕二, Bull Robert W.
    1994 年 56 巻 4 号 p. 623-626
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌ赤血球型のDシステムについて, 30品種3,191例を対象にその品種別出現頻度および遺伝子頻度を比較検討した. 日本で飼育されている犬のDシステムの頻度は品種により大きく異なることが明らかとなった. すなわち, D1型は在来種の方が欧米種に比較して高く, 欧米産の品種はD2型の頻度が高い傾向を示した. また, 日本において雑種と呼ばれる品種は, 在来種と欧米種との中間に位置する値を示した. これらの中で, 非常に興味深かった所見としては, アフガンハウンドのD1遺伝子頻度が在来種である柴犬と同じ0.3333を示した点, また, 在来種である土佐犬のD1遺伝子頻度は0.063と低く, 欧米産であるマルチーズの0.097よりも低い値であったことがあげられた.
  • 小野寺 朝子, 池田 徹也, 堀内 基広, 石黒 直隆, 小沼 操, 平野 紀夫, 見上 彪, 本多 英一, 平井 克哉, 甲斐 一成, 柚 ...
    1994 年 56 巻 4 号 p. 627-632
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    現在わが国におけるスクレイピーの汚染状況を把握するために, 1988年から1993年までに北海道, 東北, 関東及び中部地方から集めた主にサフォーク種の羊197頭の脳, 脾臓及びリンパ節からPrPscの検出を行った. そのうち北海道の16頭及び他地域の2頭からPrPscが検出されたが, 後者の2頭も北海道から導入された個体であった. 一方, これらの18頭のスクレイピー感染羊におけるPrP遺伝子を含む染色体DNAの制限酵素切断断片の多様性(RFLP)の各型の出現頻度を, 128頭の健康な羊における出現頻度と比較して, RFLPの特異的な型とスクレイピーの自然感染との間に相関があることを確認した. すなわちスクレイピー感染羊におけるRFLP型I型の頻度は健康な羊におけるI型の頻度や, スクレイピー感染羊における他の型の頻度に比べて有意に高くなっていた. 一方II型とVI型の頻度はスクレイピー感染羊に比べて健康な羊で高くなっていた. ゆえに日本のサフォーク種において, I型の羊はスクレイピーに対して感受性であり, II型とVI型の羊は抵抗性であることが示唆された. さらにスクレイピー感受性に関わる遺伝学的な背景を明らかにするために, 我が国における羊PrP遺伝子のRFLP型の分布を161頭の羊で調べた. 各々の地方でRFLP型の分布に若干差が認められた.
  • 高田 礼人, 清水 悠紀臣, 喜田 宏
    1994 年 56 巻 4 号 p. 633-637
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    不活化オーエスキー病ウイルス(ADV)をマウスの鼻腔内に接種することによって, 粘膜局所に抗ウイルスIgAおよびIgG抗体の分泌が誘導された. これらのマウスは鼻腔内への致死量のウイルス攻撃に対し, 完全な感染防御を示した. 不活化ADVにコレラトキシンBサブユニット(CTB)をアジュバントとして混合したワクチンはさらに強い免疫応答を誘導した. 一方, 不活化ADVワクチンを皮下に接種したマウスでは, CTBをアジュバントとして加えた場合でも, 粘膜局所抗体の分泌がほとんど認められなかった. これらのマウスはウイルス攻撃に対してわずかに抵抗性を示したのみで, 半数以上が死亡した. 以上の成績は感染粘膜局所の免疫応答を誘導することによって, 現行の不活化ヘルペスウイルスワクチンでは達成できない初期感染の防御が可能であることを示している. ヘルペスウイルスの初期感染を防御すれば, 潜伏感染およびその後の再活性化の問題も解決されるであろう.
  • 天野 弘, 柴田 昌利, 梶尾 規一, 両角 徹雄
    1994 年 56 巻 4 号 p. 639-644
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    7~13週齢のSPF豚19頭に異なる型のHaemophilus parasuis(3株:血清型1, 4, 5)を鼻腔内接種し, 病変の比較を行った. Nagasaki株(5型)およびNo.4株(1型)を接種した13頭中11頭が敗血症, 髄膜炎, 多発性漿膜炎を呈し, 1~6日の経過で死亡した. SW124(血清型4)株を接種した6頭のうち1頭が多発性漿膜炎を呈して死亡し, 他の1頭は発症したが回復した. 残り4頭は発症しなかった. これらのうち敗血症例では微小血栓が多くの臓器にみられた. 発症豚では急性期に血中からエンドトキシンが検出された. 酵素抗体法を用いてH. parasuis抗原の検出を試みたところ, 漿膜炎および髄膜炎病巣では, 菌抗原は主に浸潤した好中球やマクロファージの細胞質内およびファゴゾーム内に認められた. また, 敗血症例では血管内にみられた菌のほとんどは変性していた. 本菌は鼻汁からは回収されたが, 菌抗原は鼻腔からは検出されなかった. 肺には病巣は認められなかった. しかし, 扁桃には菌抗原が検出された.
  • 岡野 昇三, 多川 政弘, 浦川 紀元, 小川 龍
    1994 年 56 巻 4 号 p. 645-649
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    17頭の全身麻酔下のイヌを用いエンドトキシンショックに対するウリナスタチン(25,000U/kg, i.v.)およびメチルプレドニゾロン(30mg/kg, i.v.)の治療効果を循環動態, アラキドン酸カスケード関連物質および肺表面活性について比較検討した. その結果, 検討項目の変化に対する両薬剤の効果は, ほぼ類似する傾向にあったが, 循環動態の改善とアラキドン酸カスケード関連物質(6-keto-PGF, トロンボキサンB2およびロイコトリエンB4)の産生抑制面でメチルプレドニゾロンが優れ, 摘出肺より求めた肺表面活性に対する有効性では, ウリナスタチンが良好であった. これらのことより, エンドトキシンショックに対する治療薬としてウリナスタチンの有効性が示唆された.
  • 廣川 悦郎, 小谷 猛夫, 山手 丈至, 桑村 充, 佐久間 貞重
    1994 年 56 巻 4 号 p. 651-655
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Monocrotaline(MCT)誘発肺高血圧症ラットにおける心病変を形態学的及び免疫組織化学的に検索した. MCT(60mg/kg体重)をSD雄ラットの皮下に単回投与後, 進行性の心病変が形成された. 組織学的に, 心病変は右房室心筋細胞の肥大, 並びに単核細胞浸潤及び線維芽細胞の増殖を伴った心筋変性により特徴づけられた. これらの組織学的変化は投与後3週より観察され始め, 投与後4及び5週殺ラットにおいて進行性に増強した. これらの所見はMCT誘発肺高血圧症に起因する進行性肥大性心筋症を示すものと考えられる. 免疫組織化学的に, MCT投与後4及び5週殺ラットの左右心室筋に心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)陽性細胞がしばしば発現した. その強い免疫陽性反応は右,心室内膜下の肥大心筋細胞に主に観察され, またその陽性反応は変性心筋, 単核細胞浸潤及び線維化から成る病巣周囲の肥大心筋細胞にも存在した. これらの所見はMCT投与ラットにおけるANP発現と心肥大との密接な関係を示唆する.
  • 永幡 肇, 田中 樹竹, 大場 光洋, 南 繁, 野田 寛
    1994 年 56 巻 4 号 p. 657-660
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ白血球粘着不全症(BLAD)に罹患したホルスタイン種雌牛8頭について血清生化学的検索および全血中のルミノール依存性化学発光反応の測定を行った. 血清Na, Cl, K, Ca, P, Mg, AST, ALT, LDHおよびNEFAの10項目はいずれも症例牛で低値を示し, Na, Cl, Caに関しては健康牛に比して有意に低かった(p<0.05). 特徴的な血清タンパク像は低アルブミン血症と高ガンマグロブリン血症であり, 症例牛と健康牛との間に有意差(p<0.01)を認めた. 全血中の化学発光反応においては, 症例牛で化学発光量の増高(p<0.05)と化学発光指数の低下およびピーク時間延長の特徴的所見を認め, これらの三項目は健康牛のそれらに比較して有意差(p<0.01)を認めた. 全血を利用した化学発光反応はBLAD症例牛のスクリーニングに有用と考えられた.
  • 村田 美栄, 小沼 操, 児玉 洋
    1994 年 56 巻 4 号 p. 661-665
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    急性相蛋白質の中では系統発生上最も初期に出現した, ペントラキシンファミリーに属する血清アミロイドP成分(SAP)を, ニジマスの血清から分離する事を試みた. SAPのリガンドとして知られているアガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって分離した蛋白質は, 還元状態でのSDS-PAGEにてサブユニットの分子量が約32,000と計算され, 非還元では100,000以上であったため共有結合した構造をとっているものと判定した. N-末端アミノ酸配列は各動物の既知SAPと相同性を有し, 電子顕微鏡解析では五量体構造が認められた. 以上の結果からこの蛋白質をニジマスSAPとして同定した.
  • 佐々木 信夫
    1994 年 56 巻 4 号 p. 667-670
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    フラゾリドン(FZ)のヘキソバルビタールによる睡眠時間(HST)及びゾキサゾラミンによる麻痺時間(ZPT)に対する影響を, FZを1日当り50, 100, 200及び400mg/kg 4日間連続経口投与したラットの両薬物による正向反射消失時間を指標として検討した. ヘキソバルビタールによるHSTは, 雌雄ラットのFZの50mg/kg投与によっては変化せず, 1OOmg/kg以上の投与群では投与量にほぼ依存して延長した. また対照群における雌ラットのHSTは雄の約2倍であったが, FZの200mg/kg以上の投与群では性差が見られなくなった. ゾキサゾラミンによるZPTは, 対照群において性差を示さず, 100mg/kg以上の投与量で有意に延長した. ヘキソバルビタールとゾキサゾラミンによる正向反射消失からの回復直後における両薬物の血中濃度は, 対照群とFZ投与群との間で差が認められなかった. このことはFZによる両薬物の作用持続時間延長作用が両薬物の作用部位の感受性の変化よりも血中濃度に依存していることを示唆している. またFZの100mg/kg以上の投与量で体重増加抑制作用がみられ, FZの100mg/kg投与時には肝ミクロゾームの中のチトクロムP-450量の僅かな増加が認められた. 以上のことからFZの高用量連続経口投与はラットにおいて薬物のクリアランスの阻害を起こさせその結果HSTとZPTの延長を引き起こすことが示唆された.
  • 斉藤 守弘, 板垣 博
    1994 年 56 巻 4 号 p. 671-674
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    それぞれ, 埼玉県及び沖縄県で屠殺された, 牛と豚より得られたS. cruzi及びS. miescheriana感染筋肉をホンドタヌキに経口投与したところ感染が成立した. ホンドタヌキより排泄されたオーシストとスポロシストは, 形態学的にS. cruzi及びS. miescherianaのものに一致した. プリパテント・ピリオド及びパテントピリオドはそれぞれ9日及び66-72日であった. 以上の結果からホンドタヌキはこの両種の住肉胞子虫の終宿主となることが確認された.
  • 中久喜 正一
    1994 年 56 巻 4 号 p. 675-679
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ(Holstein)の左右の気管支からは背側, 外側, 腹側および内側の4気管支系が起こり, 気管の右外側からは気管の気管支が起こる. これらの気管支を「浦乳類の肺の気管支分岐の基本型」(Nakakuki,1975)に基づいて検討すると, 右肺は2葉に分かれた前葉と中葉, 後葉および副葉から成り, 左肺は2葉に分かれた中葉と後葉から成る. 肺動脈は主として各気管支の外側または背側に沿って走り, 肺静脈は主として各気管支の内側または腹側に沿って走る.
  • 高井 伸二, 森下 大洋, 西尾 恭, 佐々木 由香子, 椿 志郎, 樋口 徹, 萩原 紳太郎, 仙波 裕之, 加藤 昌克, 瀬能 昇, 安 ...
    1994 年 56 巻 4 号 p. 681-684
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Rhodococcus equiの毒力マーカーである15-17kDa抗原に対するモノクローナル抗体を用いたコロニーブロット法を強毒株簡易同定法として開発し, 軽種馬生産牧場の土壌,母馬及び子馬糞便から分離した菌株のプラスミドプロファイルとの比較から疫学調査における本法の有用性を検討した. 子馬糞便由来778株, 母馬糞便由来170株及び土壌由来1,267株のそれぞれ238株, 6株及び85株がコロニーブロット陽性を示し, そのうち, それぞれ235株(98.7%), 6株(100%)及び75株(88.2%)で病原性プラスミドが検出された. 一方, コロニーブロット陰性を示した子馬糞便, 母馬糞便及び土壌分離株からランダムに50菌株を選び, プラスミドプロファイルを調べたところ何れの菌株においても病原性プラスミドは検出されなかった. 以上の成績から, 本法は疫学調査において信頼度の高い, 迅速簡易な強毒株同定法であることが示された.
  • 中久喜 正一
    1994 年 56 巻 4 号 p. 685-689
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ブタの肺の気管支および肺動・静脈系にcelluloidのacetone溶液を注入して鋳型標本を作製し, 気管支分岐と肺葉の関係を明らかにし, さらに肺動・静脈分布について調べた. ブタでは左右の気管支から葉気管支および区域気管支が起こる. これらの気管支は起点から背側, 腹側, 内側および外側の4気管支系に大別できる. 背側気管支系および外側気管支系の気管支はよく発達しているが, 内側気管支系と腹側気管支系の気管支は発達が悪い. 右肺の前葉は気管の外側から起こる気管の気管支によって形成される. 中葉は外側気管支系の第1枝で形成され, 副葉は腹側気管支系の第1枝で形成される. それ以外の背側気管支系, 外側気管支系, 腹側気管支系の気管支および内側気管支系の気管支は後葉を形成する. 左肺では前葉気管支を欠除する. その代わり外側気管支系の第1枝がよく発達して2枝に分かれ, それぞれ肺葉を形成する. これら2葉が左肺の中葉で, それぞれ現在の家畜解剖学で前葉の前部および後部と呼ばれている部分に相当する. 残りの外側気管支系の気管支と背側気管支系, 腹側気管支系および内側気管支系の気管支は後葉を形成する. 肺動脈は主として4気管支系の気管支の背側または外側に沿って走る. 肺静脈は主として4気管支系の気管支の腹側または内側を走る.
  • 本田 隆, 種子野 章, 酒井 英史, 山田 進二, 高橋 英司
    1994 年 56 巻 4 号 p. 691-695
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    伝染性喉頭気管炎(ILT)ウイルス弱毒株で調整した細胞随伴性(CA)ワクチンを注射された鶏はILTに対する強い免疫を獲得した. CAワクチンと無細胞(CF)ワクチンを注射した鶏との間で抗体応答を比較したところ, いずれのワクチン注射鶏においても, 血清からは中和抗体とIgG及びIgM-ELISA抗体が検出できたが, 気管洗浄液からはいずれの抗体も検出できなかった. また, CAワクチンを注射した鶏の方が抗体応答は良好であった. これらの検出された各抗体価と攻撃に対する発症防御との間には明らかな相関は認められなかった. CA及びCFワクチンを皮下注射した鶏では1日後から6~7日後まで肝臓, 脾臓, 胸腺, 肺などからワクチンウイルスが回収されたが, 分離頻度には両ワクチン間で有意差はなかった. 今回の成績からはCAワクチンが強い免疫原性を示す原因を明らかにすることはできなかった.
  • 中馬 猛久, 山田 能子, 矢野 克也, 岡本 嘉六, 柚木 弘之
    1994 年 56 巻 4 号 p. 697-700
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    鹿児島県下のブロイラー農場で入雛から出荷まで1週間ごとに雛を得て, その盲腸内容中のCampylobacter jejuniを, DNA-DNAハイブリダイゼーション法を用いて調査を行った. 入雛直後の雛20羽中7羽(35%)がC. jejuni陽性を示し, 週齢が進むにつれて陽性率が上昇した. このことから, 雛の一部はすでに入雛時にC. jejuniを保菌している可能性が示唆された. 増菌法によって入雛から3週齢まで調査を行った場合C. jejuniは全く検出できなかったが, 同じ検体をDNA-DNAハイブリダイゼーション法で調査するとC. jejuni陽性を示す例が存在した. このことから, DND-DNAハイブリダイゼーシヨン法は増菌法よりも高感度であると考えられた.
  • 下田 実, 申 豪〓, 小久江 栄一
    1994 年 56 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    電気化学検出を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)によるラット胆汁中10-ホルミル四水素葉酸(10-HCO-H4PteGlu), 四水素葉酸(H4PteGlu)および5-メチル四水素葉酸(5-CH3-H4PteGlu)の同時測定法を開発した. 胆汁サンプルを0.2%アスコルビン酸ナトリウムで希釈し, HPLCで分析した. 分析カラムにはフェニルカラム, 0.1mM EDTAを含んだ20mM酢酸緩衝液(pH5.0)とアセトニトリルの混合液(97:3, V/V)を移動相に用い, 流速0.8ml/minで印加電圧300mVで分析した結果, 各葉酸誘導体は良好に分離した. 検出限界をS/N比3で算出すると, 10-HCO-H4PteGluが0.13ng/ml, H4PteGluが0.11ng/ml, 5-CH3-H4PteGluが0.10ng/mlであった. この分析法によって得られたラット胆汁中への各誘導体の排泄速度は, 10-HCO-H4PteGluが314±181ng/hr, H4PteGluが321±179ng/hr, 5-CH3-H4PteGluが449±198ng/hrであった. 胆汁中のこれらの誘導体の濃度は検出限界の5,000倍以上であった. 従って, この分析法はラット胆汁中葉酸誘導体の分析に極めて有用なものと考えられる.
  • 伊藤 章, 今井 壮一, 扇元 敬司
    1994 年 56 巻 4 号 p. 707-714
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    鹿児島県の黒毛和種(Bos taurus taurus) 30頭と北海道のホルスタイン種(Bos taurus taurus) 125頭におけるルーメン内の繊毛虫の構成を調査した. その結果, 併せて16属56種38型が同定されたが, そのうち, 13属44種32型は黒毛和種から同定され, 15属48種25型はホルスタイン種から見いだされた. そのうち36種19型は共通であった. 黒毛和種から, 1新種が認められたので, Entodinium yunnense n. sp. として記載した. E yunnenseは, yunnense n. f., spinonucleatum n. f., acutonucleatum n. f., spinolobum n. f. の4型に分類された. また, Entodinium bifidumで1本の尾棘だけを持つ新型が認められたので, monospinosum n. f. として記載した. 黒毛和種での平均密度は18.7×1O4/ml, 1頭あたりに出現する種の数は平均14.4, また, ホルスタイン種ではそれぞれ, 40.3×104/ml, 17.8であった. 黒毛和種の密度と種の数はホルスタイン種よりも有意に低かったにもかかわらず, 多様性指数の平均は黒毛和種で1.789, ホルスタイン種では1.718とほとんど差が認められなかった.
  • 佐藤 真澄, 神尾 次彦, 田中 省吾, 谷口 稔明, 藤崎 幸蔵
    1994 年 56 巻 4 号 p. 715-722
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Theileria sergenti実験感染牛リンパ節におけるシゾゴニーの光顕的, 電顕的観察を経時的に行った. シゾントはスポロゾイド接種部近接リンパ節において接種後4日目から8日目で認められた. マクロシゾント(核分裂期;深い切れ込みを持つ)は接種後6日目に形成された. それに続いてミクロシゾント(メロゾイト形成期;ロゼット様形態を示す)及びメロゾイトが8日目で観察された. 同じ宿主細胞内に異なるステージのシゾントが存在することから, 1つの細胞に複数のスポロゾイトが感染することが示唆された. シゾントの各発育期の形態的特徴はT. parvaなど悪性Theileriaのものに酷似していたが, シゾントの寄生による宿主細胞の分裂増殖はみられず巨大化のみが顕著であった. 本研究で観察されたT. sergentiのシゾント期は第1代シゾゴニーであるものと考えられた.
  • 中村 義男, 辻 尚利, 平 詔亨, 廣瀬 昶
    1994 年 56 巻 4 号 p. 723-727
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    突然死型乳頭糞線虫症への乳頭糞線虫寄生雌虫の関与について調べた.感染幼虫の経皮暴露により子羊が子牛と同様の感受性および経過で心臓突然死することを予備試験で確認し,子羊を用いて本試験を実施した.感染ウサギから寄生雌虫を回収し,子羊の十二指腸内に生虫体を移入,あるいは虫体乳剤を接種した.生虫体移入例では移入直後より持続性洞性頻脈が起こり,感染幼虫の経皮暴露例と同様のパターンで心室細動による心臓突然死が発現した.死亡時の盲腸便からは多数の虫卵が検出された. 虫体乳剤接種例には致死性不整脈は生じなかった.以上の結果より,移行幼虫の存在・不在にかかわらず,小腸内の寄生雌虫のみで本症が発現することが明らかになった. ざらに,寄生雌虫の虫体構成成分ではなく,生虫体の物理的作用あるいは産物が発症の原因であることが示唆された.
  • 左近允 巌, 田浦 保穂, 中市 統三, 中間 實徳, 利部 聴
    1994 年 56 巻 4 号 p. 729-733
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    免疫学的特権部位とされる子宮腔内への膵島移植により実験的糖尿病治療を試みた. Fischer344系ラットよりコラゲナーゼ法で分離した膵島, 1,000~1,200個をストレプトゾトシンによって糖尿病を誘発した同系ラットの子宮腔内(IU群), あるいは腹腔内(IP群)ヘ移植し, その効果を比較した. また, すべてのラットにエストラジオール17βとプロジェステロンを投与した. 空腹時血糖は両群とも移植後4日以内に200mg/dl以下に低下したが, IU群では移植後20日目までに全例が再上昇した. 移植後21日目の淘汰時までの体重増加はIP群で20.7±3.9g(Mean±SD), IU群で8.9±0.7gであった. またHbA1CはIP群で2.62±0.15%, IU群で2.70±0.14%と両群には有意な差は認められず, 血清フルクトサミン値ではIP群で170.3±9.5μmol/L, IU群で223.2±17.6μmol/L, とIU群で有意に増加した. また組織学的には膵島の子宮内壁への生着は認められなかったが, 移植後15日目までは浮遊状態でアルデヒドフクシン陽性細胞として検出された. 以上の結果から, 子宮腔内への膵島移植により血糖値は一時的に正常化するものの, 血糖変動に対する膵島の反応性は腹腔内に移植されたものよりも悪いことが示唆された.
  • 石川 潤, 白幡 敏一, 長谷川 孔泰
    1994 年 56 巻 4 号 p. 735-738
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    T細胞マイトジェン(ConAおよびPHA)刺激による周産期牛末梢血単核細胞(PBMC)からのガンマーインターフェロン(IFN-γ)産生とその産生細胞について検討した. IFN-γの抗ウィルス活性は抗ウシIFNモノクローナル抗体により中和された. ウシPBMCを3種類の抗ウシT細胞特異的モノクローナル抗体で処理してIFN-γの産生細胞を検討したところ, ConAおよびPHA刺激系ともに主な産生細胞はCD4+T細胞と推定されたが, PHA刺激系ではCD8+T細胞の関与もまた示唆された. マイトジェン刺激により周産期牛のPBMCから誘発されたIFN-γの産生はConAおよびPHA刺激系ともに分娩付近で最も抑制され, その後徐々に回復する傾向を示した. しかし, ConA刺激系では分娩前5週から分娩後7週までIFN活性が抑制されたのに対し, PHA刺激系では分娩前3週から分娩後2週までと比較的短期間において抑制がみられた. これらの周産期乳牛のPBMC培養にリコンビナントヒトインターロイキン2を添加したところ, ConAおよびPHA刺激系いずれにおいてもIFN産生の増大がみられた.
  • 山添 和明, 日比野 千里, 工藤 忠明, 柳井 徳磨
    1994 年 56 巻 4 号 p. 739-745
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ハトに実験的上腕骨骨幹骨折を作製し, 骨セメント注入法とプレート固定法の併用が骨折の治癒機転に及ほす影響を検討するとともに, 飛翔能力の回復についての観察も行った. その結果, 骨セメント注入法あるいはプレート固定法単独では術後2週目以内に単純X線所見で全例再骨折を認めたが, 併用法では全例に再骨折を認めず, 術後6週目以降ほぼ正常な飛翔が可能であった. マイクロアンギオグラムおよび組織学的検査から骨セメントによる内仮骨形成の阻害が観察されたが, 血液供給は術後2週目ですでに回復しており皮質壊死像も認められなかった. また骨セメントが皮質骨折端間に高度に残存した場合皮質がつながらず, 海綿骨様化が認められた. しかし飛翔能力が早期に回復したことからプレートと骨セメントが骨折部の変位を防止する良好な支持体になると考えられた.
  • 杉井 俊二, 廣田 好和
    1994 年 56 巻 4 号 p. 747-751
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    正常な成鶏から分離した血清中に存在するマンナンおよびサルモネラRa型菌と反応する蛋白質を分離し, 両血清蛋白質の抗原性および糖特異性の異同について検討した. 還元下のSDS-PAGEでは両蛋白質は分子量34,000のメイジャーバンドと2, 3本のマイナーバンドとして泳動された. 家兎抗MBP抗体を用いたウエスタンブロット法では, 両血清蛋白質のメイジャーバンドに相当する分子量34,000の位置にバンドが認められた. また両血清蛋白質とインベルターゼとの結合はN-アセチルマンノサミンにより最も効率的に阻止され,続いてマンナン, N-アセチルグルコサミン, L-フコースにより阻止されることが判った. これらの結果から, 鶏血清中に存在するマンナン結合蛋白質はサルモネラRa型菌結合因子の複合糖質との結合を担う部位に相当し, 抗原的に両者は同一物質であると推定された.
  • 超 徳明, 山口 良二, 立山 晋, 小川 博之, 山崎 ゆみ
    1994 年 56 巻 4 号 p. 753-755
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    12歳, 雌のマルチーズ犬の腹腔内に播種性転移を示した脾臓原発血管肉腫を認めた. 脾臓は著しく腫大し, 脾頭部は破裂していた. 肝臓, 腎臓, 消化管, 大網及び横隔膜の漿膜面に, 大小不同の転移性腫瘍結節が認められた. これらの結節は漿膜面から隆起し,周囲は線維組織で囲まれていたが, 容易に剥離出来た. 各臓器の実質には腫瘍病変は認められなかった. 腫瘍細胞は円形または紡錘形を呈し, その核はクロマチンに富み, 核小体は明瞭であった. 胸腔内臓器や他の組織には著変は認められなかった.
  • 足立 幸蔵, 立石 美加, 堀井 洋一郎, 永友 寛司, 清水 高正, 牧村 進
    1994 年 56 巻 4 号 p. 757-759
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    競合性固相化EIA法により, 8匹のB. gibsoni感染犬及び10匹の健常犬の赤血球結合IgG量を測定した. 重度の貧血を呈したB. gibsoni顕性感染犬(5匹)では, 不顕性感染犬(3匹)及び健常犬に比べて, 赤血球結合IgG量が高値であった. このことから, 赤血球結合IgG量の増加が, B. gibsoni感染症における貧血の機序の一端を担う可能性が示唆された.
  • 宇佐見 泰之, 岡本 芳晴, 南 三郎, 松橋 晧, 熊澤 教眞, 谷岡 真一郎, 重政 好弘
    1994 年 56 巻 4 号 p. 761-762
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ブラインドウエルチャンバーと孔径5μmのポリカーボネイトフィルターを用いて,微粉末状キチンおよびキトサンの懸濁液に対する牛多形核白血球(牛PMNs)の遊走を検討した結果, キチンおよびキトサンの平均粒径がそれぞれ30および50μmの時に比べて1μmの時, 牛PMNsは高い遊走活性を示すことが明らかとなった.
  • 森田 晴夫, 下付 和裕, 佐久間 善仁
    1994 年 56 巻 4 号 p. 763-764
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    接触型のスペキュラーマイクロスコープを用いて, 全身麻酔下で雄15頭および雌16頭のカニクイザル(推定年齢:2歳以上)の角膜内皮細胞を観察した. この方法で角膜内皮を観察すると, 大きさの均一な六角形の内皮細胞が規則正しく配列しているのがみられた.内皮細胞密度(cells/mm2)には, 左右の差, 性差は明らかでなかった. しかし, 加齢によると考えられる内皮細胞密度の減少傾向が7歳以上のサルにみられた.
  • 杉井 俊二, 秋山 和夫, 廣田 好和
    1994 年 56 巻 4 号 p. 765-766
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    健常および乳房炎罹患ホルスタイン牛から分離した血清中のサルモネラRa型菌と反応するマンナン結合蛋白質の濃度を酵素抗体法により測定した. その結果, 2-7歳齢の健常雌牛10頭, 6カ月齢の健常雄牛7頭, 6カ月齢の健常雌牛7頭の血清中濃度は77.5±33.1μg/ml, 65.8±21.8μg/ml, 52.2±10.2μg/mlであった. 乳房炎罹患牛4頭の血清中濃度は健常牛よりやや低く, 回復に伴い健常牛の血清中濃度にまで上昇することが判った. 以上の成績から, 牛血清中のマンナン結合蛋白質は乳房炎罹患に伴い, その血清中濃度が低下するが, サルモネラRa型菌と反応するマンナン結合蛋白質の濃度変化は既報のコングルチニンの濃度変化ほど顕著でないことが示唆された. 従って, この血清蛋白質が急性相反応性蛋白質になり得る可能性は低いと考えられる.
  • 谷本 忠司, 山崎 慎一郎, 大朏 祐治
    1994 年 56 巻 4 号 p. 767-769
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    4歳のサラブレッド種雄馬の脾臓に20×20×15cmの限界明瞭で出血や壊死を伴う孤存性腫瘤を認めた. 組織学的には, 多数の分裂像を示すびまん性非切れ込み型大細胞からなる悪性リンパ腫で, スターリースカイ像を示す多数のマクロファージの混在を伴っていた. 腫瘍細胞は, 酸性フォスファターゼと非特異的エステラーゼ染色でびまん性陽性に染まり, 一部の細胞が細胞質内IgM陽性, ほとんどの細胞が増殖細胞核抗原陽性であった. 電顕的には, 中等度の異染色質を持つ類円形核, 拡張を示す粗面小胞体の中等度の発達を特徴としていた. 以上の所見から, B細胞由来で強い増殖能を持つことが判明したが, 膨張性に増殖するだけで浸潤性増殖は認められなかった.
  • 納 敏, 一条 茂
    1994 年 56 巻 4 号 p. 771-772
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    北海道日高地方の1牧場においてサラブレッド種子馬7例に3~4カ月齢から明瞭となった左右対称性の甲状腺腫大が認められた. 血清T3値は正常であったが, T4値は著しい低値を示した. 同居子馬と母馬の血清甲状腺ホルモン値も同様の所見を示し, また放牧地の土壌と牧草中ヨード含量も著しい低値であった. 以上の成績から, 発病原因はヨード欠乏によるものと推測された.
  • Mina Rostami B., 立山 晉, 三好 宣彰, 内田 和幸, 山口 良二, 大塚 宏光
    1994 年 56 巻 4 号 p. 773-774
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌリンパ系腫瘍4例のゲノムDNAを, 7種ガン遺伝子プローブを用いたサザンブロットハイブリダイゼイションにより検索した. イヌリンパ性白血病症例において, ヒトc-yes-1関連イヌガン遺伝子に4~8倍の遺伝子増幅が検出された. この遺伝子増幅の意義については不明であるが, 本腫瘍の発生に何らかの関連があるのではないかと思われた.
  • 伊原 三重子, 田島 正典, 山手 丈至, 渋谷 一元
    1994 年 56 巻 4 号 p. 775-778
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    B6C3F1マウスの自然発生ハーダー腺腫瘍が雄589中18匹(3.1%), 雌609中18匹(3.0%)に認められた. 担腫瘍動物の週齢は73-109であった. これら腫瘍は腺腫32, 腺癌4及び多形性腫瘍1例からなった. 線種は増殖様式から乳頭型17, 嚢胞状乳頭型9, 腺房型5及び嚢胞型1例に分けられた. 腺癌の2例は乳頭状・浸潤性に, 他の2例は腺房状に増殖した. 多形性腫瘍はケラチン陽性の上皮性の多形細胞及び異型性の上皮細胞で内張りされた腺房からなった.
  • 多川 政弘, 原 康, 江島 博康, 林 良博, 草野 健一
    1994 年 56 巻 4 号 p. 779-780
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Dirofilaria immitisの感染子虫480隻を6ヵ月間に12回分けてflaria-freeのビーグル犬に接種し, その間ミルベマイシン オキシム0.25mg/kgを1ヵ月に1回ずつ投与した. 最終感染の6ヵ月後に剖検した結果, 非投薬犬(対照)の虫体移行率が6.5~14.8%であったのに対し投薬犬では全例回収虫体は認められず, 本剤はD. immitisの頻度感染下でも充分に予防効果を示すことが明らかにされた.
  • 佐藤 博
    1994 年 56 巻 4 号 p. 781-782
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    新生子牛のエネルギー摂取を高めるため中鎖トリグリセリド(MCT)添加乳を給与し, 血漿ケトン体濃度を調べた. C8のMCTではC10よりもケトン体上昇が大きかった. C8およびC10の混合MCTを40, 80, 120ml(朝補乳時)給与すると一過性にケトン体が上昇したが, 120 mlでは高ケトン血が長びいた. 牛乳のみ及び大豆油の給与ではケトン体の上昇を認めなかった.
  • 佐藤 良彦, 安田 準, Sinsungwe Henry, Chimana Henry, 佐藤 儀平
    1994 年 56 巻 4 号 p. 783-784
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ザンビアの1農場では, ナミビアから6週齢のダチョウを51羽輸入した. これらのダチョウは食欲不振, 下痢などの症状を呈し, 導入後1週間に19羽が死亡した. 死亡鳥4羽を剖検したところ, 腺胃および筋胃内にトウモロコシを混じたアルファルファ乾草が塊となって充満し, 極度の通過障害を起こしていた. 死亡鳥と発症鳥の細菌検査, 寄生虫検査は陰性であった. 給与飼料を改善し, 発症鳥に粘漿剤を投与したところ回復した. 以上の成績から, 本症例はダチョウにみられた食滞(stomach impaction)と診断された.
  • 大塚 佑子, 岡田 由美子, 牧野 壮一, 丸山 務
    1994 年 56 巻 4 号 p. 785-786
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1992年6月から1993年4月にかけて, 東京都内の一動物園において捕獲された野生のハシブトガラス145羽の盲腸内容物より病原性Yersiniaの分離を試みたところ, 7検体よりY. pseudotuberculosis血清型4bが検出された. これらは病原性に関連のある約70Kbのプラスミド保有と37℃における自己凝集性の2性状を示した. 過去の動物園でのエルシニア症発症時の疫学調査では餌, 飲料水, 野生げっ歯類等から本菌が分離されなかったため,動物園におけるエルシニア症の発生にガラスが何らかの関与をしている可能性が示唆された.
  • 杉井 俊二
    1994 年 56 巻 4 号 p. 787-790
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    サンドイッチ酵素抗体法を用いて, ウシ, ニワトり, ヒト血清中に存在するマンナン結合蛋白質の免疫学的交差を検討した. その結果, 抗原として全血清を用いた場合は免疫学的交差反応が認められたが, 抗原として精製蛋白質を用いた場合, 免疫学的交差反応は殆ど認められなかった. またウシ, ニワトリ, ヒト血清中にはウサギ正常IgGと反応する物質が存在する可能性が示唆された. 以上の成績から, 動物全血清中のマンナン結合蛋白質濃度をサンドイッチ酵素抗体法で測定する場合は正常ウサギIgGとの非特異的反応を充分考慮する必要がある.
  • 原 康, 多川 政弘, 江島 博康, 織間 博光, 藤田 道郎
    1994 年 56 巻 4 号 p. 791-794
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Ventral-slot法により外科的治療を行った頚部椎間板突出症の犬4症例について, 手術前および手術後のCTM像より脊髄断面積を計測した. 全例において, 手術前の計測値に比較して, 術後の計測値は増加していた. 本検査によって術前の脊柱管内の脊髄と椎間板物質の位置的関係を確認することが可能であり, 犬の頚部椎間板突出症に対するCTM検査の有用性が認められた.
  • 永田 知子, 佐伯 正信, 脇 雅之, 片岡 実, 鹿野 茂
    1994 年 56 巻 4 号 p. 795-797
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ニワトりを4群に分け, 1群を対照とし, 残り3群にスルファジメトキシン(SDM)を25, 50及び100mg/kgの濃度で含有する餌を3週間投与した. 投与中及び投与中止後, 一定時に各群のニワトリを屠殺し, 血液, 心臓, 肝臓, 脾臓, 筋胃, 後肢筋, 胸筋及び脂肪中に残留するSDMを高速液体クロマトグラフイーで定量した. 投与中止後2日目に, 各組織中のSDMは定量限界値(0.01μg/g)未満となった.
  • 岡村 宏, 坂口 正士, 本田 隆, 種子野 章, 松尾 和夫, 山田 進二
    1994 年 56 巻 4 号 p. 799-801
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    鶏伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)CE株を用いて組換えウイルスを構築した. この組換えウイルスは, チミジンキナーゼ遺伝子のSnaBI部位にSV40プロモーターと大腸菌由来のLacZ遺伝子を挿入したものである. この組換えウイルスの鶏胚初代細胞における増殖性はその親株であるCE株と同等であったことより, ILTVがウイルスベクターとして用いられる可能性が示唆された.
  • 堀井 洋一郎, 牧村 進
    1994 年 56 巻 4 号 p. 803-804
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Brugia pahangi感染スナネズミを感染後7から9週にかけてメベンダゾールにより駆虫し, 4週間隔で5回, 各々50隻の同種感染幼虫による攻撃感染を試みた. 最終感染後10週に剖検し虫体数を計数したところ平均19隻で, 対照群に比べて68.6%の減少率となり有意な抵抗性が認められた. また各攻撃感染の1週後には強い好酸球応答がみられた. 実験期間中ミクロフィラリアの血中への出現抑制効果も確認された.
  • 斎野 仁, 渡辺 斉, 池畑 努
    1994 年 56 巻 4 号 p. 805-807
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    非細胞病原性牛ウイルス性下痢-粘膜病ウイルス持続感染牛血清42検体, および正常牛血清100検体を牛胎子筋肉細胞に接種し, 間接イムノペルオキシダーゼ(IIP)法によるウイルス抗原の検出を実施した結果, 持続感染牛血清はすべて陽性, 健康牛血清はすべて陰性を示し, 干渉法の成績と一致した. また, バフィーコート直接塗抹標本からはIIP法により, 病理組織標本からはABC法によりウイルス抗原が検出され, 短期間の抗原検出に有用と考えられた.
  • 新井 克彦, 直井 昌之, 上原 孝吉
    1994 年 56 巻 4 号 p. 809-811
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌ乳腺混合腫瘍において軟骨様組織を形成する増殖筋上皮細胞について, 細胞接着分子であるNCAM, テネイシン, フィブロネクチンの発現をその特異抗体を用いて免疫組織化学的に検索したところ, これら3つの接着分子は増殖筋上皮細胞で同時に発現されることが判明した. その発現は軟骨特異的なII型コラーゲンの沈着に先立って観察され, 軟骨様組織が形成されるに従いその軟骨様細胞における陽性反応は消失した. 以上の結果より, これらの細胞接着分子は, イヌ乳腺混合腫瘍における筋上皮細胞の増殖とその後の軟骨様組織の形成において, 重要な機能を果たしていることが示唆された.
  • 山添 和明, 大橋 文人, 廉澤 剛, 西村 亮平, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1994 年 56 巻 4 号 p. 813-816
    発行日: 1994/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    小動物領域における腎の腫瘍性および嚢胞性病変に対し, X線断層撮影(CT)検査を実施した. その結果, 各腫瘍性病変は肉眼組織像とほぼ一致し, 造影剤増強法によるCT値の変動から腫瘍部と非腫瘍部が識別された. また各嚢胞性病変については, X線造影法および超音波検査が形態学的診断にはCT検査と同程度有効であったが, CT検査を実施することで立体的な位置関係の把握がきわめて明確になるものと考えられた.
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