1994 年 56 巻 5 号 p. 929-932
マレー半島の牛について Babesia ovata, B. bigemina 及び B. bovis の感染状況をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)を用いて調査した. その結果, B ovata 抗原に対しては, ほとんどの検体が感染の可能性の低いことを示す低いOD値であった. しかしながら,B. bigemina 抗原に対しては全検体の97.8%が, B. bovis 抗原に対しては74.4%が陽性を示し, 72.6%が両抗原に対して陽性であった. また, 乳牛における年齢差によるELISA OD値について検索した. 1カ月齢未満の子牛ではB. bigemina 及び B. bovis 抗原に対して高い値が認められ, 1~3カ月齢の子牛ではOD値は低下し, 6カ月齢では再び高い値が認められた. 以上の成績から, B. bigemina 及び B. bovis 感染牛はマレー半島全域に広く分布し, 両バベシアは地方病的寄生虫として生息することが示唆された.