Journal of Veterinary Medical Science
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56 巻, 5 号
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  • 原 康, 多川 政弘, 江島 博康, 織間 博光, 藤田 道郎, 山上 哲史, 梅田 昌樹, 杉山 公宏, 敷波 保夫, 筏 義人
    1994 年 56 巻 5 号 p. 817-822
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬の大腿骨遠位端外側顆にSalter-Harris 4型骨折を実験的に作製し, これを生体内分解・吸収性高分子である延伸poly-L-lactide(PLLA)製スクリューを用いてラグ固定を行い, その骨折治癒過程を観察し, その有用性を評価した. 処置後1~2カ月の時点で, 放射線学的および組織学的に, 骨折部の骨癒合が認められた. 処置後4カ月および6カ月の時点においては, 組織学的にPLLA自体の表層部に微細な亀裂が認められ, 分解・吸収過程の初期段階が認められ, さらにスクリュー周囲の炎症性細胞の浸潤は経時的に減少した. また観察期間中, 全実験動物について骨折部の癒合不全, あるいは大腿骨の成長障害などの異常所見は認められなかった. これらの所見を総括すると, 延伸PLLAスクリューは, 今回作製した実験的骨折において, 骨癒合が完了するまで骨折片を固定・維持しており, さらに骨癒合終了後には分解・吸収されるという骨端成長板骨折の整復・固定には理想的なインプラントの性質を有していると考えられた.
  • 遠藤 大二, 新倉 昌浩, 平井 莞二, 稲垣 直人, 林 正信, 中島 員洋, 佐藤 文昭
    1994 年 56 巻 5 号 p. 823-826
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    燐酸化蛋白質pp38は, マレック病リンパ腫およびリンパ芽球様細胞株において, 発現が報告されている唯一のマレック病ウイルス(MDV)蛋白質である. このpp38の機能解析は, MDVによる腫瘍化の機構を解明するうえで重要である. 機能解析では, 精製されたpp38ポリペプチドの使用により, 重要な知見を得ることが可能となる. 本研究では, pp38のcDNAにコードされているポリペプチド鎖の全長をリコンビナント蛋白質として大腸菌を用いて産生し, Ni-アフィニティクロマトグラフィーによって精製した. 産生と精製に先立ち, pp38のcDNAの全長がクローニングされ, ウイルスゲノムから予測されたオープンリーディングフレームが感染細胞内においても利用されていることを確認した. ウエスタンブロット解析において, 大腸菌で産生されたpp38が感染細胞内のpp38と同じ移動度を示した. この結果から, pp38リコンビナント蛋白質は, 感染細胞内のpp38と近い立体構造を持つことが予想された. これらの結果から, リコンビナントpp38蛋白質は機能-構造の関係を解析するために有用であることが示唆された.
  • 品川 敏恵, 石黒 直隆, 堀内 基広, 品川 森一, 松井 高峯
    1994 年 56 巻 5 号 p. 827-833
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    3種類の散発型牛白血病株, BLT2(胸腺型), BTL-PC3(仔牛型)およびBLS1(皮膚型)をマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体(mAb) 38個を用い散発型および地方病型牛白血病に発現している抗原の分布について検討した. 多くのmAbは, 一部の牛および他の動物種由来の単核細胞を除き検索した正常牛リンパ球系細胞に対して, 低い反応性しか示さなかった. mAbのほとんどは, 自然発症例の牛散発型白血病由来末梢単核細胞よりは株化したT細胞株BTL-PC3およびB細胞株BL312とKU-1に強く反応した. 38個のmAbの内27個のmAbで認識する抗原の分子量がウエスタンブロット解析により決定された. mAbC419は, 正常リンパ系細胞には反応せず, 腫瘍化した細胞に特異的に反応することから, 牛散発型白血病細胞の腫瘍関連抗原を認識していることが示唆された.
  • 本道 栄一, 九郎丸 正道, 鳥羽 通久, 林 良博
    1994 年 56 巻 5 号 p. 835-840
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    アオダイショウにおける精子発生の季節変化と精子細胞の超微形態変化を光学顕微鏡及び電子顕微鏡にて観察した. アオダイショウの精子発生は8月に始まり, 10月まで確認されたが, 他の時期には精細管内に精子は認められなかった. アオダイショウは交尾を5月から6月にかけて行うことが知られており, 本研究の結果から精子発生を交尾期後に行うことが明らかとなった. これはGironsの分類によれば, postnuptial typeに相当する. アオダイショウの精子発生過程における精子細胞の形態変化は, 基本的に哺乳類と類似していたが, いくつかの点で異なった特徴を示した. 最も特徴的な点は, 脂肪滴様構造の存在である. この構造は初期の円形精子細胞で初めて出現し, 精子細胞の成長とともに徐々にその大きさと数を増す. そして成熟精子細胞では, その核周囲に規則正しく配列する像が認められた. 精上皮から精子として離脱する精子細胞にはこの構造が認められたにもかかわらず, 輸精管内貯蔵精子には, 観察されなかった. 精子から離れた脂肪滴様構造は,輸精管全体に分布していた. また, 成熟精子細胞におけるミトコンドリアは極めて長く伸長していた.
  • 渡来 仁, 杉本 千尋, 尾上 貞雄, 小沼 操, 保田 立二
    1994 年 56 巻 5 号 p. 841-847
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ赤血球内寄生原虫Theileria sergentiの感染に伴うウシ赤血球膜のガングリオシド組成の変化を, T. sergenti感染前後の赤血球を用いて分析した. T. sergenti感染前のウシ赤血球膜のガングリオシドの主要な成分は, GM3, sialosylparagloboside (SPG), i型ガングリオシドならびにI型ガングリオシドであった. 一方, 感染後においては, GM3量は変化を示さなかったが, SPGおよびi型ガングリオシドの量が僅かに, I型ガングリオシドの量が顕著に減少した. また, 全脂質結合性シアル酸も感染後の赤血球において減少した. さらに, 顕著に減少したI型ガングリオシドの量は, 原虫の寄生率の減少とともに回復した. これらの現象は, T. sergenti感染後の赤血球においては必ず認められた. 同様の変化は, ウシ赤血球膜由来のガングリオシド画分を組み込んだリポソームとT. sergenti原虫とのイソキュベーションにおいても認められた. これらのことから, SPGとi型ガングリオシドの僅かな減少ならびにI型ガングリオシドの顕著な減少は, T. sergenti感染に伴う赤血球膜のガングリオシドの組成の特徴的な変化であることが示された.
  • 上地 正実, 照井 治子, 中山 智宏, 三品 美夏, 若尾 義人, 高橋 貢
    1994 年 56 巻 5 号 p. 849-854
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    臨床的に健康な雑種成犬雄11頭, 雌11頭(体重7-13kg)を用いて4時間毎に採尿採血を行い, 尿中に排泄されるN-Acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG, EC 3. 2. 1. 30)ならびにγ-glutamyl transpeptidase (γ-GTP, EC 2. 3. 2. 2)の日内変動を検討した. 尿量は, 12-16時に有意な(P<0.05)高値を示した. クレアチニンクリアランスには変動は認められなかったが, クレアチニン排泄量は, 8-16時の間に有意に高値を示した(P<0.05). NAG, γ-GTPの活性値, 排泄量およびクレアチニンindexに特徴的な変動は認められなかった. クレアチニン排泄量とクレアチニンクリアランス(r=0.693), γ-GTP排泄量とγ-GTP index(r=0.724)ならびにNAG排泄量とNAG index(r=0.878)には相関が認められた. また, 各4時間尿と24時間尿のNAGならびにγ-GTPの排泄量とそれぞれのクレアチニンindexに高い相関が認められ, 尿中酵素を尿中クレアチニンで補正することによって, 随時尿においても24時間尿の酵素活性値を推定できる可能性が示唆された.
  • 遠藤 秀紀, 九郎丸 正道, 林 良博
    1994 年 56 巻 5 号 p. 855-860
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    西表島産リュウキュウイノシシの頭骨35例(頭蓋骨と下顎骨25組, および下顎骨のみ10例)を用いて, 骨計測学的検討を行った. 年齢は下顎歯列の萌出と咬耗の状態を基準に査定し, 性別は下顎犬歯歯冠高の計測値および下顎犬歯歯根部のX線観察結果を利用して判定した. 計測部位は頭蓋骨で13部位, 下顎骨で14部位である. 最大頭蓋長と下顎骨全長から, 成長パターンを検討したところ, 幼若期に著しい成長が見られた. また, 幼獣で既に性差が出現していることが明らかとなった. 一方, 各部位の相対成長係数の比較から, 頭蓋骨と下顎骨の双方で, 長径が幅径よりも速く成長することが示された. また, 顔面頭蓋では長径の成長が著しく, 脳頭蓋では幅径の成長が速かった. 下顎骨の長径の成長においては, 下顎体の成長が大きな比重を占めていることが示された. いくつかの幅径の計測部位において, 頭蓋骨と下顎骨の成長速度は, そこに付着する筋肉の発達に関連して決定されることが示唆された. 以上の結果を, 他のリュウキュウイノシシ集団およびニホンイノシシの検討結果と比較することによって, リュウキュウイノシシの起源, およびリュウキュウイノシシの系統関係の把握に, 有効な情報が得られることが期待される.
  • 北川 均, 保田 恭志, 鬼頭 克也, 佐々木 栄英
    1994 年 56 巻 5 号 p. 861-867
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫症caval syndrome(CS)症例67例と犬糸状虫非寄生犬19例において血液ガスと循環動態を検討した. 動脈血酸素分圧は, 非寄生犬では91.5±7.3mmHg, CS例で犬糸状虫摘出後に回復した46例(回復例)では74.9±14.3mmHg, 摘出後死亡あるいは安楽死した21例(非回復例)では64.6±14.7mmHgであった. 60mmHg以下の動脈血酸素分圧は回復例の30.4%, 非回復例の38.1%で検出された. 動脈血炭酸ガス分圧は, 非寄生犬では35.8±4.9mmHg, 回復例では30.7±5.6mmHg, 非回復例では28.8±6.2mmHgであった. CS例の動脈血酸素分圧と炭酸ガス分圧は非寄生犬よりも低く, 肺胞気-動脈血酸素分圧較差は高値であった. CS例は非寄生犬よりも動脈血pHと重炭酸イオン濃度が低く, アニオンギャップが大きかった. 非生存例の血清乳酸濃度(13.2±3.9mmol/l)は, 非寄生犬(1.7±0.8mmol/l)および回復例(2.7±1.8mmol/l)よりも高かった. 動脈血酸素分圧は, 平均肺動脈圧(r=0.65, p<0.01), 心指数(r=0.44, p<0.05), 総肺血管抵抗(r=-0.70, p<0.01)と有意に相関した. 犬糸状虫摘出1週後, 回復例(21例)では動脈血酸素分圧と炭酸ガス分圧が増加し, 肺胞気-動脈血酸素分圧較差が減少したが, 非回復例(10例)では変化しなかった. 血液ガス値は循環障害と換気障害を反映し, CS例における犬糸状虫摘出後の予後判定に有用である.
  • 宮沢 孝幸, 猪島 康雄, 河本 麻理子, 池田 靖弘, 見上 彪
    1994 年 56 巻 5 号 p. 869-872
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染性遺伝子クローンのlong terminal repeat (LTR)のU3領域から, AP-1およびAP-4推定結合部位を含む31塩基を欠損した変異ウイルスを作製し, コンカナバリンA (Con-A)で刺激した初代ネコ末梢血単核球(fPBMC)での, 増殖性および細胞傷害性を野生株と比較した. 変異ウイルスの増殖性および細胞傷害性は, 野生株とほぼ同じであり, 変異ウイルスの欠損部位は感染実験中安定であった. これらの結果から, LTRのAP-1およびAP-4推定結合部位を含む31塩基は, Con-A刺激fPBMCでの増殖に必須でないことが明らかとなった.
  • 小川 絵里, 堀井 佳広, 本田 真由美, 高橋 令冶
    1994 年 56 巻 5 号 p. 873-877
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    正常なグルタチオン(GSH)濃度を示す遺伝性高Na+, K+-ATPase犬赤血球(犬HK-low GSH赤血球)のメトヘモグロビン生成および還元について, 高K+高GSH濃度を示す犬赤血球(犬HK-high GSH赤血球)および正常犬赤血球(犬LK-low GSH赤血球)と比較した. 亜硝酸塩によるメトヘモグロビン生成速度はLK-low GSH > HK-low GSH > HK-high GSHの順で大きく, メトヘモグロビン濃度は7分および15分で各群間に有意差がみられた. グルコースによるメトヘモグロビン還元速度は, HK-low GSH, HK-high GSH共にLK-low GSHの約1.7倍であった. ピルビン酸生成量から, メトヘモグロビンは主としてNADH-メトヘモグロビンリダクターゼにより還元され, 糖代謝とカップリングしていることが確認された. またHK-low GSH犬赤血球は, 高ピルビン酸キナーゼ活性にともない, HK-high GSH犬赤血球と同程度に高い糖代謝速度を示した. HK-low GSH犬赤血球のヘモグロビンが, LK-low GSH犬赤血球に比べ酸化から強く防御されているのは糖代謝促進によるものと考えられる.
  • 李 相玖, 尹 和栄, 長谷川 篤彦, 中山 裕之, 後藤 直彰
    1994 年 56 巻 5 号 p. 879-882
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルス(MHV-2)感染マウスの胸腺リンパ球の変化を形態的に調べた. MHV-2感染48時間後から胸腺は萎縮し, 皮質を中心に広範なリンパ球の破壊像を認めた. 免疫染色ではウイルス抗原は破壊されたリンパ球, 胸腺上皮細胞などに分布していた. 電顕では, ウイルス粒子が上記の細胞で検出され, 皮質病変部のリンパ球は核の凝縮, 断片化と細胞質の空胞化を示した. 胸腺細胞DNAの電気泳動では, 核DNAの切断による「はしご状構造」が示された. 以上の結果からMHV-2感染による胸腺細胞の破壊とアポトーシスとの関係が示唆された.
  • 酒井 徹, 安居院 高志, 三浦 みどり, 山田 宜永, 松本 耕三
    1994 年 56 巻 5 号 p. 883-886
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Long-Evans Cinnamon(LEC)ラットは血清IgG1レベルが異常に少ないことが報告されている. この基礎IgG1レベルを決定する表現型は試験的にImmunoglobulin sub-class regulator-1 (Igsr-1)と命名され, 正常ラットはIgsr-1A型(正常レベルIgG1発現型)に, LECラットはIgsr-1B型(低レベルIgG1発現型)に分類された. 今回我々はLECラットのこの表現型の遺伝様式について調べた. LECラット(Igsr-1B型)と正常ラット(Igsr-1A型)の交配から得られたF1ラットの血清IgG1レベルは両者の中間値であった. このことはIgsr-1表現型が共優性遺伝様式をとることを示唆している. 更にF1ラットをLECラットに戻し交配したラットの血清IgG1レベルは正常ラットとLECラットのレベルの間で様々な値をとり, クリアーな分離はみられなかった. このことはIgsr-1表現型が複数の遺伝子座により制御されていることを示唆している. 更に個々の戻し交配ラットの血清IgG1値はもう一つの突然変異遺伝子型, thid (T-helper immunodeficiency)とは関連していなかった. これらの結果からLECラットの血清IgG1低レベル異常はヘルパーT細胞機能の欠損とは無関係で, 何か未知の機構の複合的欠陥によるものと推察される.
  • 釣賀 一二三, 伊勢 伸哉, 林 正信, 水谷 哲也, 高橋 芳幸, 金川 弘司
    1994 年 56 巻 5 号 p. 887-890
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    北海道のぼりべつクマ牧場で飼育されているエゾヒグマについて, ヒトの分野でその有用性が認められているミニサテライトプローブ "Myo"を用いDNAフィンガープリントを作成し, 個体識別, 父子判定への応用の可能性について検討した. HinfI, HaeIIIの2種類の制限酵素を用いて作成したDNAフィンガープリント像より, 飼育個体群内での偶然に同じバンドパターンを持つ個体が出現する確率を求めたところ, 2.5×10-2および1.3×10-1という値がそれぞれ得られた. 特に, HinfIについてはこれまでにイヌや家畜について報告されている値と対応しており, エゾヒグマにおいてもMyoの個体識別への応用が可能であることが示唆された. また, 父子判定については, 父親由来のバンドが少ない傾向が見られたが, バンドパターンは, 正しい親子関係を示すものであった.
  • 村上 洋介, 加藤 あずさ, 津田 知幸, 両角 徹雄, 三浦 康男, 杉村 崇明
    1994 年 56 巻 5 号 p. 891-894
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    わが国で発生した肥育豚の慢性肺炎と繁殖豚の異常産の各症例から, 豚の肺胞マクロファージ細胞を用いて合計3株の豚生殖器・呼吸器症候群(PRRS)ウイルスを分離した. これらの国内分離株は, 間接蛍光抗体法(IIF)とIndirect immunoperoxidase mono-layer assayのいずれにおいてもアメリカで分離されたPRRSウイルスの46448株(米国株)とは強い交差反応を示すが, オランダで分離されたLelystad virus (欧州株)とは弱い交差反応しか示さなかった. さらに, 自然感染豚の血清を用いて, 上記の米国株, 欧州株および国内分離株に対するIIF抗体の検出率と抗体価の変動を比較したところ, 国内分離株と米国株を抗原とした場合にはそれらの抗体検出率と抗体価の変動がほほ一致するのに対して, 欧州株を抗原とした場合には抗体検出率が低く, また抗体変動もほとんど認められなかった. 以上のことから, わが国でPRRSウイルスを分離し国内にPRRSの発生があることを明らかにするとともに, 国内流行株が米国株に近縁であることが示唆された.
  • 宮沢 孝幸, 川口 寧, 河本 麻理子, 朝長 啓造, 見上 彪
    1994 年 56 巻 5 号 p. 895-899
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ヒト結腸癌由来株化細胞(SW480細胞)およびネコ腎由来株化細胞(CRFK細胞)での種々のレンチウイルスのlong terminal repeat (LTR)の基礎転写活性を, クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子をLTRの下流に接続したプラスミドを用いて, CATアッセイで比較した. SW480細胞においては, ビスナウイルス(visna virus), ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV), サル免疫不全ウイルス(SIVAGM)のLTRの基礎転写活性は中程度であり, ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)のLTRの活性は低かった. CRFK細胞においては, visna virus, CAEV, SIVAGMのLTRの基礎転写活性は高く, HIV-1, HIV-2およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)のLTRの基礎転写活性は中程度であった. FIVのLTRの構造は, visna virusおよびCAEVのLTRの構造に類似していることが報告されているが, 今回の実験結果から, 機能的にはvisna virusおよびCAEVのLTRとは, かなり異なることが示唆された.
  • 桑原 博義, 布谷 鉄夫, 田島 正典, 加藤 篤, 鮫島 都郷
    1994 年 56 巻 5 号 p. 901-909
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    離乳期の子豚に発生した新しい豚病を検索した. 本病は臨床的に元気消失, 発熱,削痩, 発咳などとともに高度な腹式呼吸を特徴とするため俗にヘコヘコ病と呼ばれている. 罹患子豚に共通した病変はび慢性のII型肺胞上皮細胞の増殖を伴った間質性肺炎, 髄膜脳炎, リンパ組織の萎縮などであった. 罹患子豚の諸器官から初代豚肺細胞培養(PLC)に原因ウイルスが分離され, 血清学的に豚生殖器・呼吸器症候群(Lelystad)ウイルスと同定された. 直径約49nmの多数のウイルス粒子が, 分離ウイルスを感染させたPLC培養の肺胞上皮細胞と肺マクロファージの細胞質に検出された. 本病は分離ウイルスをコンベンショナルの子豚に鼻腔内接種することにより再現された.
  • 古澤 賢彦, 大森 保成, 渡辺 徹
    1994 年 56 巻 5 号 p. 911-916
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコの膵島細胞におけるモノアミンの合成を立証するために膵臓組織の連続もしくはミラー切片に免疫組織化学的染色を実施した. グルカゴン抗血清に対して免疫陽性反応を示した膵島A細胞の半数がセロトニン抗血清に免疫陽性反応を示した. 膵臓ポリペプヂド抗血清に対して免疫陽性反応を示したPP細胞もまたセロトニン抗血清に免疫陽性反応を示したが, PP細胞とセロトニン免疫陽性細胞の重なりは少数に止まった. 一方, ほとんどすべてのAおよびPP細胞が芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素抗血清に対して免疫陽性反応を示した. 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素はセロトニン合成酵素であることから, 膵島AおよびPP細胞はセロトニン合成能があると結論される. インスリンおよびソマトスタチン抗血清に免疫陽性反応を示した膵島BおよびD細胞はセロトニンおよび芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素抗血清に免疫陽性反応を示さなかった.
  • 稲元 民夫, 菊池 克明, 飯島 宏明, 川島 康永, 中井 裕, 扇元 敬司
    1994 年 56 巻 5 号 p. 917-921
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1985年から1989年にかけて日本各地の豚の肺炎病巣部から分離された Pasteurella multocida 61株と Actinobacillus pleuropneumoniae 35株のChloretracycline (CTC), thiamphenicol (TP), tylosin (TS), acetyleisovalery-tylosin (AIV-TS), tilmicosin (TMS), mirosamycin (MRM)に対する薬剤感受性を調べた. 両菌種ともほとんどの株がCTC, TP, TMSに対し感受性を示した. P. multocida の51株(83.6%)と46株(75.4%)の発育が, それぞれ3.13μg/mlの濃度のCTCとTPで抑制された. TSはほとんどすべての株に対して低い活性を示した(MIC≧6.25μg/ml). P. multocida の58株(95.1%), 23株(37.7%), 50株(82%)がそれぞれAIV-TS, TMS, MRMに対し6.25μg/ml以上のMIC値を示した. A. pleuropneumoniae のCTCに対するMIC値は1.56μg/ml以下であった. A. pleuropneumoniae の32株(91.4%)と33株(94.3%)が, それぞれ3.13μg/mlのTPとTMSで抑制された. TS, AIV-TS, MRMはすべての A. pleuropneumoniae に対し低い抗菌活性を示した(MIC≧6.25μg/ml). P. multocida には3つの, A. pleuropneumoniae には2つの異なる耐性パターンが見られた.
  • 近藤 元紀, 鷲巣 誠, 木下 現, 松倉 克仁, 小林 圀仁, 三阪 和徳, 織間 博光, 鷲巣 月美, 本好 茂一
    1994 年 56 巻 5 号 p. 923-928
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Dibutyryl cyclic AMP (DBcAMP) と milrinone の心血管系におよぼす影響を, 麻酔下の犬に右心バイパス法を用いて比較した. 実験中は左室の前負荷を一定に保ち, DBcAMP と milrinone の心収縮力および左室後負荷におよぼす影響を評価した. DBcAMP と milrinone はともに著明な陽性変時作用, 陽性変力作用, 血管拡張作用および利尿作用を示した. DBcAMPはこれらの作用を緩徐かつ持続的に現したが, milrinone の薬理的作用発現は急激で, 短時間に消失した. DBcAMPの後負荷軽減作用と心収縮力増大作用はともに長時間性で, milrinone の作用に比べ強かった. Milrinone では後負荷軽減作用よりも心収縮力増大作用の方が大きく, 平均動脈圧は有意に増加した(p < 0.05). 以上の結果から, DBcAMPは後負荷軽減作用と心収縮力増大作用を緩徐かつ持続的に発現させ, 心拍出量の増大を得たい場合に適用できると考えられた. 一方, milrinone は心拍出量を増加させるとともに, 血圧の上昇を得たい場合に適用できることが示唆された.
  • Chandrawathani P., 辻 尚利, 河津 信一郎, 石川 正志, 藤崎 幸蔵
    1994 年 56 巻 5 号 p. 929-932
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    マレー半島の牛について Babesia ovata, B. bigemina 及び B. bovis の感染状況をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)を用いて調査した. その結果, B ovata 抗原に対しては, ほとんどの検体が感染の可能性の低いことを示す低いOD値であった. しかしながら,B. bigemina 抗原に対しては全検体の97.8%が, B. bovis 抗原に対しては74.4%が陽性を示し, 72.6%が両抗原に対して陽性であった. また, 乳牛における年齢差によるELISA OD値について検索した. 1カ月齢未満の子牛ではB. bigemina 及び B. bovis 抗原に対して高い値が認められ, 1~3カ月齢の子牛ではOD値は低下し, 6カ月齢では再び高い値が認められた. 以上の成績から, B. bigemina 及び B. bovis 感染牛はマレー半島全域に広く分布し, 両バベシアは地方病的寄生虫として生息することが示唆された.
  • 桑原 幹典, 浅沼 武敏, 稲波 修, 神 隆, 下川 繁三, 笠井 憲雪, 加藤 邦彦, 佐藤 文昭
    1994 年 56 巻 5 号 p. 933-938
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    自作製のMRI用プローブを用いて若齢(5週齢)および加齢(23~24ヶ月齢)雌雄ラットの脳を撮像した. 小さな対象物からS/N比の高いMR信号を得る必要性から, 撮像は7.05テスラ(T)の強磁場下で行われた. 銅箔膜をアクリル管(内径5cm, 長さ10cm, 厚さ2mm)を支持体として巻き付け, ヘルムホルツ型のコイルを作製し, MRIプローブとした. プローブは絶縁体を箔膜間に挿入することにより, 7.05Tでのプロトン(1H)の共鳴周波数である300 MHzに共振するよう調整された. MR画像はT1強調(繰返時間500ms, エコー時間20ms), 二次元フーリエ変換法, データマトリックスサイズ128位相エンコード, スライス厚1 mm, 集積回数8回で撮像された. 撮像領域(FOV)は矢状断像で10×10cm2, 冠状断像で6×6cm2であった. 最初に若齢ラットを用い, 脳冠状断MR画像と同部位のフォルマリン固定脳組織切片の接写画像とを比較した. その結果, MR画像において大脳皮質, 海馬, 視床および視床下部が明瞭に撮像されることが確認され, 本プロープが7.05Tの強磁場下でのMR撮像に適しているものと判断された. 次いで, 若齢および加齢ラットの脳矢状断, 冠状断のMRIを行い, 加齢に伴う大脳皮質のMR信号強度低下, 第三脳室拡大, 頭蓋骨肥厚が観察され,本プローブが実験小動物組織内変化の経時的観察に有効と結論された.
  • 前田 秋彦, 水谷 哲也, 林 正信, 渡辺 智正, 波岡 茂郎
    1994 年 56 巻 5 号 p. 939-945
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    22塩基のリボザイムコアの塩基配列と, 標的MHVポリメラーゼ遺伝子に相補的な243塩基(S-リボザイム)あるいは926塩基(L-リボザイム)の配列を有し, ウイルスRNAを切断する2種類のリボザイムを作製してMHV増殖抑制効果を検討した. 作製したりボザイムによる標的RNAの切断反応は, cell-free 条件下では温度, Mg2+濃度およびリボザイム:標的RNA量比に依存して進行した. ベクターpEFに組み込んで, DBT細胞に導入して得た数株のS-, L-リボザイム高発現細胞においては, ウイルス増殖が顕著に抑制された. S-リボザイムの in vitro におけるウイルスRNA切断速度は, L-リボザイムに比べて速かったが, MHVの増殖阻害効果については両者を発現している細胞間で, 有意差は認められなかった.
  • 宮本 篤, 松元 光春, 西尾 晃
    1994 年 56 巻 5 号 p. 947-950
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    血管緊張の内皮依存性修飾を摘出ブタおよびウシ脳底動脈で検討した. L-ニトロアルギニン(NO合成阻害剤)およびメチレンブルー(可溶性グアニレートシクラーゼ阻害剤)は, ブタおよびウシ脳底動脈の血管緊張を上昇させたが, インドメタシン(シクロオキシゲナーゼ阻害剤)は減少させた. ブラジキニンは, 予め収縮させたブタ脳底動脈を内皮依存性に弛緩させたが, ウシ脳底動脈では弛緩させなかった. フッ化ナトリウム(G-蛋白活性化剤)は, 予め収縮させたブタおよびウシ脳底動脈も内皮依存性に弛緩させた. ブラジキニンおよびフッ化ナトリウムによる影響は, 内皮の除去により完全に, またL-ニトロアルギニンおよびメチレンブルーの前処置により著しく抑制されたが, インドメタシンでは抑制されなかった. ニトロプルシド(グアニレートシクラーゼ活性化剤)は,予め収縮させた内皮を除去した両種の脳底動脈を弛緩させた. これらの結果は,脳底動脈の血管緊張の内皮による修飾に種差のあることを示唆している.
  • 林 慶, 西村 亮平, 山木 明, 金 輝律, 松永 悟, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1994 年 56 巻 5 号 p. 951-956
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌにおいてメデトミジン20μg/kgとミダゾラム0.3mg/kg(Me-Mi), あるいはメデトミジン20μ/kgとブトルファノール0.1mg/kg(Me-B)を組み合わせて投与し, 得られた鎮静効果を, メデトミジン20, 40および80μg/kg(Me20, Me40, Me80)を単独投与した場合の効果と比較検討した. その結果, Me-MiおよびMe-Bでは非常に迅速に強力な鎮静効果が得られ, 約40分間の最大効果発現時には, いずれのイヌも完全に横臥し, 周囲環境, 音刺激に反応せず, 中程度の反射抑制と鎮痛作用が得られ, さらにMe-Miでは自発運動も全く消失し, 優れた筋弛緩作用も得られた. これに対しMe40, Me80では, その鎮静効果はMe-Mi, Me-Bに比べて弱くまた個体間のばらつきもやや大きかった. Me20ではその効果はさらに弱かった. イヌにおいてメデトミジンをミダゾラムあるいはブトルファノールと併用すると, 両者が相乗的に作用することにより低用量のメデトミジンを用いても, 強力な安定した鎮静効果が得られるものと考えられ, とくにメデトミジン-ミダゾラムの組み合わせでは非常に優れた鎮静状態が得られ, イヌの鎮静法として幅広く応用可能で有用であると考えられた.
  • 品川 敏恵, 石黒 直隆, 堀内 基広, 品川 森一
    1994 年 56 巻 5 号 p. 957-959
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    散発型牛白血病細胞株に対して作製したモノクローナル抗体(mAb)38個の, ウシTリンパ腫細胞(BTL-27)の増殖に対する影響について検討した. その結果, mAB S37が著しい増殖抑制効果を示した. S37の存在下で培養した細胞は, 核の濃縮及びDNAの断片化が観察された. これにより, mAb S37はBTL-27に対しアポトーシスによる細胞死を引き起こすことが明らかとなった.
  • 原澤 亮
    1994 年 56 巻 5 号 p. 961-964
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚の日本脳炎, 伝染性胃腸炎, パルボウイルス病, およびヒトの麻疹, 風疹, 流行性耳下腺炎に対する生ワクチンから検出された pestivirus RNA の5'非コード領域を比較検討し, 以下の成績を得た. (1)検出された pestivirus RNA は, 牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)のものと思われた. (2)これら pestivirus は既知のBVDV株も含めて, 少なくとも3型(I, II, III)に分けられた. (3)塩基置換は二次構造へ寄与するように共変的(covariant)であった. (4)想定された二次構造は原核生物のρ非依存性ターミネーターに類似していた. (5)5'非コード領域内に短いORFが比較的よく保存されていた.
  • 川俣 昌和
    1994 年 56 巻 5 号 p. 965-967
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    過剰排卵処置前における卵巣内の小卵胞数と卵巣反応との関係を調べるため, ホルスタイン経産牛に合計55回の過剰排卵処置を行った. その結果, 過剰排卵処置開始前0-1.5日目に超音波画像診断装置を用いて検査した両卵巣内の小卵胞数(直径3-6mm)と過剰排卵処置後の黄体数(r=0.440), 総回収胚数(r=0.503)および移植可能胚数(r=0.482)との間に, 有意の相関関係がみられた.
  • 代田 欣二, 斉藤 吉之, 武藤 真, 若尾 義人, 宇根 有美, 野村 靖夫
    1994 年 56 巻 5 号 p. 969-971
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    10カ月齢のファローの四徴症の牛が肺動脈狭窄緩和手術中に死亡した. 剖検で, 骨折を認めなかったが, 組織学的に脳, 腎臓, 肺, 副腎, 下垂体の毛細血管内に脂肪栓子が見られた. 腎臓では糸球体に多数の脂肪栓子が存在した. 脳では神経細胞に著変なく, 大脳皮質で稀に脂肪が栓塞した血管周囲に出血や壊死が見られた. 脂肪栓塞症の引金は肋骨切除術で, 心奇形による右-左-短絡で脂肪栓子が交叉性に, 全身に到達したと考えられた.
  • 中山 智宏, 若尾 義人, 瀧口 聖, 上地 正実, 田中 克明, 高橋 貢
    1994 年 56 巻 5 号 p. 973-975
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    カラードプラ心エコー法(CD)により正常ビーグル犬20頭を用いて, 弁逆流の出現頻度を検討した. 弁逆流は, 肺動脈弁, 憎帽弁, および大動脈弁でそれぞれ75, 15および10%認められたが, 三尖弁では認められなかった. これらの逆流シグナルの逆流速度は, 低速であった. この特徴は, CDで逆流シグナルが検出された場合, その血行動態的有意性を鑑別する上で重要であると考えられた.
  • 板垣 匡, 坂本 司, 堤 可厚, 板垣 博
    1994 年 56 巻 5 号 p. 977-979
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Wistar系ラットに対する Fasciola 属の感染性を虫体の回収率および発育によって比較検討した. F. hepatica, F. gigantica および日本産肝蛭の虫体回収率はそれぞれ20.0-30.0%, 0-5.0%および36.6%-47.5%であった. F. hepatica および日本産肝蛭は感染後8週, 12週にそれぞれ性成熟した虫体が認められたが, F. gigantica では成熟虫体は12週後まで認められなかった. 従って, F. hepatica および日本産肝蛭はラットに対する感染性が高いが, F. gigantica は著しく低いことが明らかとなった.
  • 中山 智宏, 若尾 義人, 上地 正実, 武藤 眞, 陰山 敏昭, 田中 克明, 川畑 充, 高橋 貢
    1994 年 56 巻 5 号 p. 981-984
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    不完全型心内膜床欠損症と診断したコリー犬を体外循環により整腹を行った. 本症は右室負荷所見, 心エコー検査での心房中隔一次孔欠損の存在, 房室弁の付着異常, また特徴的な左室造影像により診断した. 欠損孔の整復は, 三尖弁付着部の線維組織でパッチ縫着を行った結果, 刺激伝導路の傷害を回避できた. 症例は体外循環より離脱したが, 術後33時間後に死亡した. 剖検時に憎帽弁裂隙が認められた.
  • Echeverria Maria Gab-riela, 乗峰 潤三, Galosi Cecilia Monica, Oliva Gracie ...
    1994 年 56 巻 5 号 p. 985-987
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    制限酵素により4つのアルゼンチンのオーエスキー病ウイルス株のゲノムの性状を解析し, 米国, スウェーデン, フランス, 日本の4株と比較した. アルゼンチン株のうち3株はBamHI切断パターンのタイプIに分類されたが, 1株だけはタイプIIであった. このタイプII株は1981年に分離されたが, それ以来, このタイプによる感染はアルゼンチンにおいて報告されておらず, 本病発生農家における迅速な豚の全淘汰対策が, 当該タイプによる本病の流行阻止に効を奏したものと考えられた.
  • 高岡 雅哉, 矢本 敬, 寺西 宗広, 真鍋 淳, 後藤 直彰
    1994 年 56 巻 5 号 p. 989-991
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Fischer 344雌ラットの1例に甲状腺濾胞上皮細胞の細胞質内水腫を観察した. 光顕的に, 濾胞上皮細胞は水腫性に腫大し, 細胞質はエオジンに均一に淡染した. 細胞質は, PAS染色, サイロキシンおよびサイログロブリン免疫染色で陰性であった. 電顕的には, 少量の無定型物質を入れた粗面小胞体の著しい拡張が観察され, 細胞内小器官の軽微な退行像も認められた. これらの所見より, 本病変は限局した細胞内水腫が粗面小胞体に発現したものと考えられ, 甲状腺濾胞上皮細胞の水腫変性と診断した.
  • 中村 直子, 土居 卓也, 古岡 秀文, 加藤 誠, 稲田 一郎, 井口 弘之, 納 敏, 松井 高峯
    1994 年 56 巻 5 号 p. 993-994
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    慢性鼓脹症に罹患した6頭のホルスタイン雌牛について病理学的に検索した. 肉眼的には, 病変は横隔膜に限局し, 退色・硬化していた. 組織学的には, 病変は筋線維の大小不同, 空胞および硝子様変性, 筋線維分裂, 中心コア, sarcoplasmic mass, 並びに ring fiber といった変性性変化を示した. これらの病変は, Meuse-Rhine-Yssel 種における横隔膜筋ジストロフィー症に一致し, ホルスタイン種においてもこの疾患の存在が確認された.
  • 小笠 晃, 筒井 敏彦, 河上 栄一
    1994 年 56 巻 5 号 p. 995-996
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    離乳後2日目の豚にE2Bを0.2または0.4mg筋注して, 血中LHの動態を観察した. その結果, E2B投与後60-66時間に集中してLHサージが認められた. また離乳日にE2B 0.2mg(I群), 離乳後2日目に0.2(II群)または0.4mg(III群)投与群では離乳から発情までの日数及び発情発現率は, II群が対照群に比べ勝っていた. 分娩率はIII群のみが対照群に比べ有意に低かった. しかし, 産子数には著しい差は認められなかった.
  • 足立 幸蔵, 立石 美加, 堀井 洋一郎, 永友 寛司, 清水 高正, 牧村 進
    1994 年 56 巻 5 号 p. 997-999
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    酵素免疫測定法(ELISA)を用いて, B. gibsoni 感染犬血清中の抗赤血球膜抗体の自己赤血球膜に対する反応性について調べた. 感染血清中の抗赤血球膜抗体は, 未処理(正常)赤血球の表面には結合せず, 酸化(フェニルヒドラジン)及び酵素(ノイラミニダーゼ)処理を施した赤血球の表面にのみ結合すること, 及び精製赤血球膜に結合することが明らかとなった. よって, B. gibsoni 感染症で認められる, 赤血球細胞骨格形成タンパク質に対する抗体は正常赤血球膜タンパク質に結合するが, 赤血球膜貫通露出タンパク質に対する抗体は, 酸化障害またはシアル酸除去を受けた赤血球膜表面糖タンパク質にのみ結合することが推察される. このことは, B. gibsoni 感染症における赤血球結合IgG量の増加及び貧血の機序を明らかにする上で重要である.
  • Pecoraro Marcelo Ricardo, 川ロ 寧, 沖田 賢治, 猪島 康雄, 遠矢 幸伸, 甲斐 知恵子, 見上 彪
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1001-1003
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコ腎由来Crandell feline kidney (CRFK) 細胞表面にネコCD8α鎖を安定に発現する形質転換細胞を単離した. ラウス肉腫ウイルス long terminal repeat の下流にネコCD8α鎖cDNAを接続したneo耐性遺伝子を含む発現ベクターを構築し, CRFK細胞に導入した. G418含有培地にて2カ月以上選択し, その間3度のクローニングを行った結果, ネコCD8α鎖を安定かつ高率に発現する細胞株を得た.
  • 中村 義男, 辻 尚利, 平 詔亨
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1005-1007
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    乳頭糞線虫感染幼虫(105/kg)を暴露したウサギはパテント感染成立後に食欲が激減し, 5羽中4羽が暴露後19-33日に死亡した. 衰弱進行期においでも異常心電図は認められなかった. 乳頭糞線虫の濃厚感染はウサギに食欲減退に基づく衰弱を起こすが, 心機能には直接影響を与えないことが示唆された.
  • 林 慶, 西村 亮平, 山木 明, 金 輝律, 松永 悟, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1009-1011
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌにおけるメデトミジン(20μg/kg)-ミダゾラム(0.3mg/kg)に対するアティパメゾール(80μg/kg)の桔抗効果について検討した. その結果アティパメゾールはメデトミジン-ミダゾラムの鎮静, 筋弛緩および鎮痛作用に迅速かつ効果的に桔抗し, 覚醒時間および全回復時間は有意に短縮した. 同時に低下していた心拍数, 呼吸数, 体温も, 迅速に投与前値程度に回復した.
  • 水谷 哲也, 石田 こずえ, 前田 秋彦, 林 正信, 渡辺 智正, 波岡 茂郎
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1013-1015
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルス(MHV)感染DBT細胞において最近報告されたmRNA8および9がMHVのJHM株感染細胞で感染3時間後から観察されることを示し, これらの転写産物がウイルス複製サイクルの初期に役割を果たしていんことを示唆した. また, mRNA 8は完全に保存された塩基配列から, mRNA 9は不完全な配列から合成が開始されるが両mRNAとも感染マウスの肝臓や脳で検出され, in vivoにおいても不完全配列から転写が開始されることを示した.
  • 長岡 健朗, デ マヨ アンヘレス, 高木 昌美, 太田 修一
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1017-1019
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1989年~1990年にフィリピンで初めて H. paragallinarum が分離された. 分離株5株のうち3株について血清学的な性状を検討した. 赤血球凝集性, 血清型特異モノクローナル抗体に対する反応性および交差免疫試験の結果から, それらはそれぞれA, B, Cの血清型に属することが明らかになった.
  • 内田 達也, ハスブラ , 中村 貴史, 中井 裕, 扇元 敬司
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1021-1023
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    E. tenella, E. necatrix, E. acervulina で免疫したニワトリの血清抗体の交差反応性を観察した. これらのオーシストより調製した可溶性抗原を用いたELISAでは, ニワトリ抗血清間に交差反応性が存在し, 特に, E. tenella と E. necatrix 間で強いことが示された. E. tenella オーシスト抗原を用いたイムノブロッティングでは, E. tenella, E.necatrix 抗血清に共通して強い反応が見られる33kDaの交差反応抗原が検出された. また, 130kDa抗原はいずれの抗血清とも強く反応することから3者の共通抗原であることが示された.
  • 座喜味 聡, 辻 尚利, 藤崎 幸蔵
    1994 年 56 巻 5 号 p. 1025-1027
    発行日: 1994/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Anaplasma marginale (Am)とA. centrale (Ac)の構成蛋白を2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分析した. AmおよびAcともに分子量約39kDaの, 3-4個のスポットから構成される主要蛋白が認められたが, わずかに移動度に差があった. また, 5個の蛋白スポットが両種に共通に認められた. その他のスポットは, それぞれの種に特異的であった.
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