抄録
ラウス肉腫ウイルス(RSV)による種々の腫瘍化ウズラ細胞は, 株化細胞, ウズラ胎児初代培養細胞(QE細胞)に関わらず, 新鮮ウズラ血清中の補体を活性化して細胞表面上に補佐第3成分(C3)を沈着させた. このC3の沈着は, ウイルス産生の有無とは関連しなかった. 一方, 化学癌性物質によるウズラ腫瘍細胞株, トリ白血病ウイルス感染QE細胞, また正常QE細胞では, このウズラC3の沈着は認められなかった. さらに, 温度感受性変異株のRSVをQE細胞に感染させると, 細胞の腫瘍化の許容温度である37℃ では補体を活性化したが, 腫瘍化を起こさない41℃では補体を活性化しなかった. 41℃でもウイルス産生は起こっているので, 細胞表面上のウイルス分子が, この活性化に必須の役割を果たしているのではないと考えられた. この腫瘍細胞表面上での補体活性化はEGTA-Mg++では阻害されずにEDTAで阻害された. よってこの活性化は第2経路を介していると考えられた. それはまた, 新鮮ウズラ血清をこれらのウズラ腫瘍細胞と反応させた後の血清中補体価において, 第2経路を介した活性の方が, 顕著に消費されていたことによっても証明された.