1995 年 57 巻 6 号 p. 1041-1044
本研究では, 反芻動物における病態行動の発現機構を解明する第一段階として, 一過的な病態行動を誘起する実験モデルを作出し, その行動の数値化を試みた. 4頭の卵巣摘除雌シバヤギの静脈内に200 ng/kg のエンドトキシン(リポポリサッカライド; LPS) を投与し, 無拘束状態で各種行動を観察して対照区と比較した. 全ての動物において, 縮瞳および震えといった臨床症状が, それぞれLPS投与39.5±3.1~296.5±9.9分後および46.0±2.3~251.0±15.5分後に観察された. 一般的な行動に関しては, 立位・座位といった姿勢には変化が認められなかったものの, 摂食・反芻時間, 毛づくろい回数が, 対照区と比して有意に減少した. これらの結果より, LPSを投与することでシバヤギに定型的な病態行動の発現を誘起することが可能であり, これらの行動学的変化を数値化して評価し得ることが示された.