Journal of Veterinary Medical Science
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シスプラチン惹起非乏尿性急性腎不全ラットにおける心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の腎に対する反応性
永野 伸郎八木 幹生加藤 慎一郎古屋 良宏宮田 そのえ眞鍋 昇
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1995 年 57 巻 6 号 p. 997-1002

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抄録
制癌剤のシスプラチンでラットに非乏尿性急性腎不全を惹起後, 心房性A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の腎作用を正常対照群と比較し次の結果を得た. (1) 代謝ゲージ実験において, シスプラチン投与ラットは血中尿素窒素値及び血清クレアチニン値の増加を示し, クレアチニンクリアランス(CCr)は投与4日目に最小値まで減少した. 投与4日目に尿蛋白値の一過性の上昇を認めた. (2) シスプラチン投与ラットでのANP濯流投与は腎血漿流量, 尿中カリウム及び尿素排泄分画に影響せず, 用量依存的かつ有意に尿流量(UFR), CCr, 尿中ナトリウム(FENa)及びクロライド (FECl) 排泄分画, 尿中リン並びに尿中マグネシウム排泄量を増加させた. (3) ネフローゼ患者及びアドリアマイシンやアミノヌクレオシドで惹起した腎障害動物において, ANPの腎作用は減弱する事が報じられているが, これに反してシスプラチン投与ラットでは, ANPのUFR, CCr, FENa, FECl 及びMg排泄に対する作用は正常対照群に比較して増強する事が観察された. (4) シスプラチン投与ラットの腎組織標本は糸球体障害を示さず, 髄質外層外帯部の近位直尿細管(S3)の広範な壊死像を呈した. 以上より, ANPに対する腎の反応性の増加はシスプラチンによる近位尿細管細胞壊死の条件下で, ナトリウム, 水, ANP自身がANPの主要標的部位である髄質内層集合管に多量に輸送, 到達された事に起因するものと考えられた.
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© 社団法人 日本獣医学会
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