1995年1月~3月の間に採取した33頭の猫の血液のうち, 3頭(9.1%)からわが国で初めて猫ひっかき病の原因菌であるBartonella henselaeを分離した. 3頭のうち1頭は, 尿閉を呈した1歳半の雄の飼い猫, 他の2頭は外見上健康な6歳の雌の不要猫ならびに年齢不詳の雌の飼い猫であった. 猫血液を溶血遠心管(Wampole Isolator tube)に採血後, 5%ウサギ血液加ハートインフュージョン寒天に塗抹し, 35℃, 5%CO2下で培養したところ, 14日目に微細なラフ型コロニーを形成した. 分離菌は, グラム陰性, 多形性単桿菌であった. 菌体より抽出したDNAはリケッチアクエン酸合成酵素遺伝子認識プライマーを用いたPCR法により増幅され, その増幅DNAの制限酵素(Taq I, Hha I)切断パターンからB.henselaeと同定された. 以上から, わが国の猫にもB.henselaeが分布していることが明らかとなり, 本菌の病原巣としての猫の重要性が確認された.