1996 年 58 巻 12 号 p. 1205-1209
急速輸液は肺に障害をもたらす可能性が示唆されているが, ウマでは肺水腫の定量的および経時的診断が不可能であったことから, 輸液療法に起因する肺水腫の病態は明らかにされていない. 本研究では, 肺水腫の定量的診断方法である熱とナトリウムを用いる二重指示薬希釈法のウマにおける測定精度を評価する目的で, 二重指示薬希釈法の理論に基づき開発されたlung water computerによる肺血管外水分量の測定値(ETV)を直接法による実測値(PEWV)と比較した. その結果, ETVは7.82±0.62 ml/kg, PEWVに対するETVの検出率は0.996±0.038, ETVとPEWVの間の相関関係は, 回帰直線Y=1.23X - 1.73で示され, 相関係数0.953, 危険率5%未満の有意な相関が認められた. このように, 二重指示薬希釈法によって測定された肺血管外水分量は直接法による測定値と有意に一致することから, ウマの正常肺における二重指示薬希釈法は高い測定精度を有することが明らかとなった.