Journal of Veterinary Medical Science
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58 巻, 12 号
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  • 村田 浩一, 増田 隆一
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1157-1159
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    外生殖器の形態からは性を判別し難いフタユビナマケモノ(Choloepus didactylus)のY染色体上性決定遺伝子(SRY)を合成酵素連鎖反応(PCR)増幅し, 仔の性鑑別をおこなった. 5ヶ月齢の仔および対照とした両親から毛を採取しDNAを抽出した. 仔および父親からSRY断片(216塩基対)がPCR増幅されたが, 母親からは増幅されなかった. ナマケモノのPCR増幅産物(166塩基対)の塩基配列を決定し, すでに報告されている他の哺乳類のSRY遺伝子配列と比較した. ナマケモノのPCR増幅産物にはそれらの遺伝子と高い相同性がみられ(74.1-86.8%), アミノ酸レベルでも同様であった(63.6-85.5%). このことから, ナマケモノのPCR増幅産物はSRY遺伝子の一部であることが推察され, 哺乳類の間で高い保存性をもっていることが分かった. この結果から仔の性別は雄と判定された. ナマケモノの毛を用いたPCR法による性鑑別は動物園での繁殖計画に役立つものである. 知る限りにおいて,貧歯目のSRY遺伝子配列に関する報告は本報が初である.
  • 力ーン モハマド ザヒルル, 橋本 善春, 岩見 由生彦, 岩永 敏彦
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1161-1167
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    性ホルモンを投与したニワトりの卵管におけるT細胞の動態を明らかにする目的で免疫組織化学的研究を実施した. 哺乳類のCD3, CD4, CD8に対応するニワトリのリンパ球表面抗原に特異的なモノクローナル抗体(CT3, CT4, CT8)を用いて, エストロジェンあるいはプロゲステロン投与幼鶏を検索した. 無処置群の卵管では孵化後4週までリンパ球はまったく出現しない. 7日齢のニワトリにエストロジェン(ジエチルスチルベストロール: DES)を単独に, あるいはDESとプロゲステロンを同時投与ずると, CT3陽性のリンパ球(すなわち汎T細胞)がホルモン投与12時間後の卵管に初めて出現した. それらはホルモン投与48時間後にかけて急速に増加し, 96時間後まで高い出現頻度を示した. その後卵管膨大部のCT3陽性リンパ球は, 固有層における卵白分泌腺の増殖に伴い出現頻度が減少したが, このような減少は腹部では見られなかった. 膨大部と膣部におけるT細胞数は, DESとプロゲステロン併用群よりもDES単独投与群で有意に高かった. T細胞サブセットの中ではCT8陽性細胞がCT4陽性細胞より多かったが, この関係は正常成鶏での所見と同じであった. 性ホルモン投与によって胸腺, 牌臓, 盲腸扇桃の萎縮と末梢血中でのリンパ球増加が見られたことから, 性ホルモンがリンパ性器官から卵管へのリンパ球の移動を招くことが示唆された.
  • 朝比奈 政利, 石黒 直隆, 呉 東来, 御領 政信, Davis William C., 岡田 幸助
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1169-1174
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    6例の散発型ウシ白血病(子牛型2例, 胸腺型3例, 中間型1例)と5例の地方病性ウシ白血病について, ウシc-myb遺伝子の発現を検索した. 散発型ウシ白血病腫瘍細胞は未熟B細胞(1例)または未熟T細胞(5例)由来であり, このうち, 胸腺型の1例を除き, BoCD8 single positive T lymphomaを含む全例で癌遺伝子c-myb mRNAが発現していた. 一方, 大部分の成熟B細胞由来地方病性ウシ白血病腫瘍細胞では同遺伝子の発現は検出できなかった. これらの結果は, c-mybの発現が腫瘍細胞の分化と関連していることを示唆した.
  • 佐藤 良彦
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1175-1179
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ジュウシマッの自然感染例から分離されたSalmonella Typhimuriumの感染性を調べた. 1羽当たり102CFU, 104CFUあるいは105CFUのS. Typhimuriumを, それぞれ8羽のジュウシマッのそ嚢内に接種し1週間観察した. その結果, 104CFU接種区の4羽および105CFU接種区において全羽に感染が成立し, 肝臓の巣状壊死は前者の4羽, 後者の6羽に認められた. 次に105CFUのS. Typhimuriumを8羽のジュウシマツに接種し22日間観察したところ, 14日目と20日目にそれぞれ1羽が死亡した. 糞便中への排菌は接種翌日から最終日まで認められ, 最大排菌量は3.9×108 CFU/gであった. 接種22日後における肝臓, 脾臓, 腸管の保菌, および肝臓の巣状壊死は死亡鳥も含め7羽に認められた. 以上の成績は, ジュウシマツ由来S. Typhimuriumがジュウシマツに対し病原性と感染持続性を有することを示し, このことからジュウシマツにおけるS. Typhimurium感染症はヒトへの感染源として非常に重要と考えられた.
  • 工藤 由起子, 森下 芳行, 長岡 芳昭, 春日 文子, 熊谷 進
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1181-1185
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    抗生物質による下痢の発症をウサギを用いて調べた. ウサギに各種抗生物質を静脈注射にて単回投与した結果, sulbactam/cefoperazone, cefmetazole, clindamycin, piperacillin, aspoxicillinではウサギの下痢発症率が40%以上であった. sulbactam/cefoperazoneによって下痢を起こしたウサギの盲腸内容物はClostridium difficile enterotoxin検出キットに陽性反応を示すと同時にC. difficileが分離された. 一方, cefmetazoleによって下痢を起こしたウサギについてはC. difficileとの関連は認められなかった. しかし, 下痢発症個体の腸内からはclostridiaが高い菌数で検出され, その一部はClostridium innocuumとClostridium sporogenesであった.
  • 元 鍾漢, 大石 直樹, 川村 輝雄, 杉若 輝夫, 福田 俊, 佐藤 れえ子, 内藤 善久
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1187-1192
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    分娩前後の牛を用いて, 陰イオン飼料中のCaおよびP含量の差が血漿, 尿および骨のミネラル代謝へ及ぼす影響を検討した. 動物はホルスタイン種経産牛15頭(5頭/群)を飼料中のCaとPの含量および陽陰イオンバランス[(Na+K)-(Cl+S)mEq/kg 乾物]によって, 飼料1[低Ca(0.46%), 低P(0.24%), 陽イオン(+195.8mEq/kg乾物)], 飼料2[低Ca(0.46%), 低P(0.24%), 陰イオン(-32.4mEq/kg乾物)]および飼料3[高Ca(0.93%), 高P(0.60%), 陰イオン(-41.0mEq/kg乾物)]群とに分けた. 各飼料を分娩約4週間前から分娩後5日まで摂取させた. その結果, 各飼料群のいずれの牛においても乳熱の発症は見られなかったが, 分娩後から2日目までの血漿Ca濃度は飼料3群が飼料1と2群に比べ高値を示す傾向にあった. 尿中Ca排泄は分娩前後において飼料2と3群のそれは飼料1群に比べ高値を示した. 血漿Pi濃度および尿中Pi排泄は分娩前後において飼料3群が飼料1と2群に比べ高値を示した. 血漿上皮小体ホルモン濃度は各飼料群間で有意な差は見られなかった. 分娩後5日目において, 腸骨海綿質のCaおよびMg含量と骨量および骨梁骨の幅は各群間に有意な差はなかったが, 飼料2群が最も低値を示した. 以上の結果から, 陰イオン飼料中の充分なCaおよびPの含量は, 分娩前後の牛における効果的な血漿CaとPi濃度の維持および陰イオン飼料の給与に伴う尿中ミネラル排泄の増加による潜在的な骨障害を防ぐ可能性を示唆した.
  • 泉澤 康晴, Yamaguchi Mamoru, Bertone Alicia L., Tangkawattana Prasarn, Mas ...
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1193-1204
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    健康馬の中手節指関節または中足趾節関節の後部関節嚢における滑膜絨毛に見られる特殊な血管構造について, 電顕(TEM)を中心とした組織学的検索を行った. 滑膜絨毛先端では, 血管の大きさは約12μmで, 3-6個の内皮細胞からなり, そのほとんどが収縮様構造を呈した. 絨毛中位以下では, 血管は6個以上の内皮細胞からなり, 広い管腔を有した. いずれの内皮細胞も, 管腔内へのびる良く発達した細胞突起とおびただしい細胞内フィラメントを有した. これらの血管は, 断続した線維芽細胞様の細胞, 弾性線維, コラーゲン線維および滑膜細胞により取り囲まれていた. また, 絨毛先端付近の内皮細胞上およびその周囲には, 直径0.2μm, 15nmの周期を持ったミエリン様構造が認められた. 以上の結果は, 他の臓器には見られない滑膜絨毛固有のものであり, 血管内血液成分の吸収や代謝, 関節内の圧力や温度の変化を感知するセンサーや固有受容器様の働きを有している可能性を示唆している.
  • 伊藤 忍, 石丸 睦樹, 帆保 誠二, 藤永 徹
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1205-1209
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    急速輸液は肺に障害をもたらす可能性が示唆されているが, ウマでは肺水腫の定量的および経時的診断が不可能であったことから, 輸液療法に起因する肺水腫の病態は明らかにされていない. 本研究では, 肺水腫の定量的診断方法である熱とナトリウムを用いる二重指示薬希釈法のウマにおける測定精度を評価する目的で, 二重指示薬希釈法の理論に基づき開発されたlung water computerによる肺血管外水分量の測定値(ETV)を直接法による実測値(PEWV)と比較した. その結果, ETVは7.82±0.62 ml/kg, PEWVに対するETVの検出率は0.996±0.038, ETVとPEWVの間の相関関係は, 回帰直線Y=1.23X - 1.73で示され, 相関係数0.953, 危険率5%未満の有意な相関が認められた. このように, 二重指示薬希釈法によって測定された肺血管外水分量は直接法による測定値と有意に一致することから, ウマの正常肺における二重指示薬希釈法は高い測定精度を有することが明らかとなった.
  • 大谷 新太郎, 奥田 潔, 大谷 昌之, 山田 純三
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1211-1217
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ子宮内膜におけるIGF-IおよびEGFが細胞特異的に局在しているかどうか, また発情周期にともなって増減しているかを明らかにする目的で, その局在を免疫組織化学的に比較検討した. 正常な発情周期を繰り返すホルスタイン種未経産牛(n=54)の子宮内膜バイオプシーを実施し, その日付に基づき(発情日を0日とする)対象牛を以下の9群に分類した. 1)20~0日, 2)1~3日, 3)4~5日, 4)6~7日, 5)8~10日, 6)11~13日, 7)14~15日, 8)16~17日, 9)18~19日. 各切片における内膜上皮細胞, 子宮腺上皮細胞および間質細胞の各1,000個の細胞について, 免疫陽性細胞数を算定し比較した. 内膜上皮細胞および間質細胞におけるIGF-Iの免疫陽性細胞数は, 子宮腺上皮細胞と比べ, 発情周期を通して多く(p<0.01), 内膜上皮細胞では約5日周期の増減が認められた. 子宮腺上皮細胞における免疫陽性細胞数は, 発情日から日数の経過に伴い減少した. 一方, EGFの免疫陽性細胞数は, 発情周期を通して, 間質細胞では内膜上皮細胞および子宮腺上皮細胞より多かった(p<0.01). 間質細胞のEGF免疫陽性細胞数は, 発情日に少なく, 1日に急激に増加した後, 約5日周期で増減を繰り返した. 以上のように, ウシ子宮膜におけるIGF-IおよびEGFは, 内膜上皮細胞, 子宮腺上皮細胞および間質細胞において発情周期にともない特異的に局在し, 増減を繰り返していることが示された.
  • Oros Jorge, 松下 悟, Rodriguez Jose L., Rodriguez Francisco, Fernandez An ...
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1219-1221
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ラットカーバチルス抗原を, 標識ストレプトアビジンビオチン(LSAB)法と3-アミノ-9-エチルカルバゾル(AEC)を基質とした免疫ペルオキシダーゼ法を用いて, 免疫組織化学的に検出した. 免疫染色陽性部位は気管支の線毛上皮に限局しており, ラットカーバチルスに対する特異性が確認された. 本法はラットカーバチルスの検出に有用で, 間接免疫蛍光法より有利であると思われた.
  • 福本 真一郎, 内田 隆代, 大林 正士, 池邊 裕介, 笹野 聡美
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1223-1225
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    山口県下の動物園で弊死した3歳の雌ケープキリンGiraffa camelopardalis giraffaの第四胃から線虫が検出され[雄 (体長8.3mm), 雌(11.4mm)], 特徴的な交接刺(長さ0.7 mm)と交接嚢の形状から毛様線虫科に属するCamelostrogylus mentulatus (Railliet et Henry, 1909) Orloff, 1933と同定した. キリンおよび我が国からは今回が初記録である. 本種の検出されたキリンは国外から輸入された両親から同動物園内で誕生した. 同じ敷地には数種の偶蹄目が同居していたため, これらの動物からの感染が示唆された. 輸入動物園動物による新たな寄生虫の我が国への導入の可能性を指摘した.
  • 島崎 敬一, Nam Myoung Soo, 原川 信二, 田仲 哲也, 小俣 吉孝, 齋藤 篤志, 玖村 朗人, 三河 勝彦, 五十嵐 郁 ...
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1227-1229
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    牛ラクトフェリンのN-末端に近い25残基からなるペプチド, ラクトフェリシン(LFcin)は非常に強い抗菌活性を示す. LFcinの多様な機能の発現機作を解明する一手段として, 抗LFcinモノクローナル抗体(mAb)を作成した. LFcinはKLHにカップリングさせてマウスを免疫した. 得られたmAbは化学合成したLFcinとも反応性を示した. 膜上でのべプチド合成システムSPOTsによる判定結果, およびアミノ酸側鎖の化学修飾による結果と併せ, 抗LFcin mAbの結合する部位はQWRと推定された.
  • カーン モハマド ザヒルル, 橋本 善春
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1231-1234
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ニワトリのファブリキウス嚢(フ嚢)における孵化後のT細胞サブセットの分布を免疫組織化学的に検索した結果, フ嚢の上皮および固有層の両域に以下のT細胞サブセット群の局在が観察された. 細胞数計量によりTcR1+CT8+細胞は上皮層内に優位に分布していたが, TcR2+CT8+細胞は固有層内に多く認められた. これらのフ嚢内T細胞サブセット群の各出現頻度は孵化後5週齢で最大であったが, その後減少に転じ, 同15週齢では少数が維持されていた. 上述の結果から, 孵化後早期のフ嚢内には上述の各T細胞サブセット群が局在しており, フ嚢自身の局所免疫系の維持に関与しているものと考えられた.
  • 岩瀬 隆之, 山本 雅子, 白井 明志, 赤堀 文昭, 政岡 俊夫, 滝澤 達也, 有嶋 和義, 江口 保暢
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1235-1236
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    妊娠12日のラットに, エチレンチオウレア(ETU)の200mg/kgを単回経口投与し, 母体血漿中, 羊水および胎子体内でのETUの濃度推移を観察した. 母体血漿中および羊水中のETU濃度は, ほぼ2時間でピークに達し, その後徐々に減少し, 48時間で消失した. 胎子自身のETU濃度は30分でピークに達し, 投与後48時間で消失した. 胎子に対するETUの効果の一部は, 胎子が羊水中において高濃度のETUに長時間暴露されたことによるものと考えられる.
  • 高木 光博, 左近允 巌, 鈴木 達行
    1996 年 58 巻 12 号 p. 1237-1238
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    牛体外受精胚の内細胞塊(ICM)細胞における凍結融解操作後のBromodeoxyuridine (BrdU)取り込みを指標としたDNA合成率を検索した. 各凍結保護剤を用いて凍結融解操作を行った群の生存IVF胚由来ICMのBrdU陽性細胞数は, 未凍結IVF胚由来ICMのBrdU陽性細胞数に比較して低くなる傾向が見られた. 以上の結果より, 牛IVF胚融解操作は融解直後から培養後にかけてのICMにおけるDNA合成に少なからず影響し, 未凍結の牛IVF胚に比較してDNA合成率は低くなる傾向があることが示唆された.
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