抄録
1982年~1993年に悪性乳腺腫瘍と診断された猫53例のカルテからその予後を検討した. 品種は日本系雑種とシャムが優位を占め, 診断時の平均年齢は11.1歳であった. 診断の1年後および2年後の生存率はそれぞれ31.8%および17.7%で, 本疾患の不良な予後が示唆された. 生存期間は腫瘍の大きさあるいはWHOの臨床病期と有意に相関していたが, 品種, 年齢, 性とは関連がなかった. 肺転移の認められた29例は, 転移確認後5ヵ月以内に全例が死亡した. 術後の予後は摘出時の腫瘍の大きさと有意な相関がみられたが, シクロフォスファミドやビンクリスチンを用いた補助的化学療法および術式との有意な相関は認められなかった.