抄録
ライト兄弟による人類初の動力有人飛行の成功以来、航空機やロケットの開発においては常に風洞が用いられ、その性能向上を支えてきた。我が国においては、航空機の空力特性の最終確認のための大型風洞が宇宙航空研究開発機構(JAXA)に集中して整備され、戦後開発されたほぼすべての航空機・宇宙機はこれらの大型風洞群での試験を経て空へと飛び立って行った。試験速度域は、低速から極超音速までの全速度域をカバーし、現在でもその役割を担い続けている。本稿では、JAXA大型風洞群の概要を紹介するとともに、近年の試験・計測技術の開発やデータ精度及び生産性の向上の取り組みについて述べる。また、航空宇宙機開発になくてはならない設計ツールとして成長してきた数値流体シミュレーション技術(CFD: Computational Fluid Dynamics)との連携についても合わせて紹介する。