抄録
「情報の可視化・定量化」は現代生物学においても、ますますその重要性を増している。筆者らは生物を構成する最小の機能単位とされる「細胞」に着目し、その構造や機能の探求を通じてヒトを含めた生物の基本的なしくみを理解することを目指している。顕微鏡により観察されたミクロな細胞内の現象から有効な情報を抽出し、細胞の理解につなげるためには可視化技術が多いに役立つ。筆者らは「細胞質流動」と呼ばれる細胞内での大規模な流れの原動力を解析している。 PIV法により細胞質流動の定量化に成功し、時空間的にダイナミックに変化する速度場を明らかにすることができた。一方で、流体力学シミュレーションを行うことにより、実測した速度場を定量的に再現するモデルの構築に成功した。このモデルは流体力学の観点から動物細胞の細胞質流動を再現する初めてのモデルであり、細胞質流動の原動力や細胞質の物性の理解を前進させるものである。