2025 年 45 巻 172 号 p. 3-6
近年,CFDによる境界層乱流遷移の研究としてDNSが実施されるようになってきたが,これらのDNSでは初期擾乱の与え方に大きな不確定要素が残されており,実飛行や風洞試験などの現実における初期擾乱とは大きな乖離が存在する.本稿では,極超音速風洞試験を対象とした乱流遷移過程のDNSにおいて初期擾乱を可能な限り現実に近づけることでDNSと風洞試験の乖離を解消することを目指した2つの事例を紹介する.極超音速風洞ノズルを模擬したDNSではノズル壁面上で乱流境界層を発生させ,乱流境界層が放射するノイズによって生じる試験気流試の乱れを模擬することに成功した.また,風洞試験を模して向かい合わせに配置した二枚の平板を対象としたDNSでは,一方の平板で人工的な擾乱により乱流境界層を発生させ,その乱流境界層が放射するノイズによりもう一方の平板上で境界層を乱流に遷移させることに成功した.