抄録
本研究の目的は,生態系保全型放牧確立に向けた基礎的データの提供である.中国青海省玉樹蔵族自治州の暖季・寒季放牧地(それぞれWSGPおよびCSGP)でヤク3頭の行動観察を行った.採食時間は,WSGPでは2009年7月(W09)に590.2分/日,2010年8月(W10)に511.8分/日,CSGPでは2008年4月(C08)に468.0 分/日で, W09が最も長かった(P<0.05).反芻時間はそれぞれ373.5,419.8,195.3分/日で,WSGPがCSGP よりも長かった(P<0.05).反芻行動での咀嚼数/食塊は観察期による有意差を示し(P<0.001),咀嚼速度はCSGPがWSGPよりも速かった(P<0.05).採食行動ではWSGPがCSGPよりもバイト速度は速く(P<0.001),パッチ間歩数は多かった(P<0.001).採食時間/フィーディングステーション(FS)はC08がW09よりも長く(P<0.05),バイト/FSはC08がW10よりも少なかった(P<0.05).野草放牧地の植生と現存量の季節による違いがヤクの行動に影響していると考えられ,新たな放牧方式の検討が必要と考えられた.