ネピアグラスの矮性晩生品種(DLネピアグラス)を南九州の生産者へ普及する過程で,造成年における雑草防除が本牧草の良好な定着と粗飼料収量を確保する重要な要因であることが明らかとなった.本研究は,3種類の雑草防除管理,すなわち節間伸長茎では再生能力を欠く一年生セタリアの混播,ペーパーマルチの設置および手取り除草と雑草防除なしについて,乾物収量,粗飼料品質および越冬性を2カ年(2008~2009年および2010~2011年)にわたって検討した.いずれの雑草防除管理も雑草防除なしと比べて,草高,茎数密度,葉身比率および葉面積指数などの植物体の各形質に有意な正の効果をもたらした.特に,ペーパーマルチの設置は,両年ともに最も高い収量が得られ,2008~2009年では越冬率が最も高く100%であった.一年生セタリアの混播は,雑草によるDLネピアグラスの収量減を部分的に補完する効果があった.粗飼料品質としての
in vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量に対する雑草防除の効果は認められなかった.したがって,ペーパーマルチの設置と一年生セタリアの混播はともに,造成したDLネピアグラスの収量性を確保するため,また越冬性改善の可能性のある有効な雑草防除手法として提起できるものと推察された.
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