日本暖地畜産学会報
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55 巻, 1 号
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総説
原著論文(一般論文)
  • 曹 旭敏, 長谷川 信美, 宋 仁徳, 李 国梅, 孫 軍
    2012 年 55 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,生態系保全型放牧確立に向けた基礎的データの提供である.中国青海省玉樹蔵族自治州の暖季・寒季放牧地(それぞれWSGPおよびCSGP)でヤク3頭の行動観察を行った.採食時間は,WSGPでは2009年7月(W09)に590.2分/日,2010年8月(W10)に511.8分/日,CSGPでは2008年4月(C08)に468.0 分/日で, W09が最も長かった(P<0.05).反芻時間はそれぞれ373.5,419.8,195.3分/日で,WSGPがCSGP よりも長かった(P<0.05).反芻行動での咀嚼数/食塊は観察期による有意差を示し(P<0.001),咀嚼速度はCSGPがWSGPよりも速かった(P<0.05).採食行動ではWSGPがCSGPよりもバイト速度は速く(P<0.001),パッチ間歩数は多かった(P<0.001).採食時間/フィーディングステーション(FS)はC08がW09よりも長く(P<0.05),バイト/FSはC08がW10よりも少なかった(P<0.05).野草放牧地の植生と現存量の季節による違いがヤクの行動に影響していると考えられ,新たな放牧方式の検討が必要と考えられた.
  • UTAMY Renny Fatmyah, 石井 康之, 井戸田 幸子, KHAIRANI Lizah
    2012 年 55 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
    ネピアグラスの矮性晩生品種(DLネピアグラス)を南九州の生産者へ普及する過程で,造成年における雑草防除が本牧草の良好な定着と粗飼料収量を確保する重要な要因であることが明らかとなった.本研究は,3種類の雑草防除管理,すなわち節間伸長茎では再生能力を欠く一年生セタリアの混播,ペーパーマルチの設置および手取り除草と雑草防除なしについて,乾物収量,粗飼料品質および越冬性を2カ年(2008~2009年および2010~2011年)にわたって検討した.いずれの雑草防除管理も雑草防除なしと比べて,草高,茎数密度,葉身比率および葉面積指数などの植物体の各形質に有意な正の効果をもたらした.特に,ペーパーマルチの設置は,両年ともに最も高い収量が得られ,2008~2009年では越冬率が最も高く100%であった.一年生セタリアの混播は,雑草によるDLネピアグラスの収量減を部分的に補完する効果があった.粗飼料品質としてのin vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量に対する雑草防除の効果は認められなかった.したがって,ペーパーマルチの設置と一年生セタリアの混播はともに,造成したDLネピアグラスの収量性を確保するため,また越冬性改善の可能性のある有効な雑草防除手法として提起できるものと推察された.
  • 吉田 美代, 高山 耕二, 石井 大介, 廣瀬 潤, 木山 孝茂, 松元 里志, 片平 清美, 伊村 嘉美, 中西 良孝, 赤井 克己
    2012 年 55 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
     採草地における省力かつ効果的なシカ侵入防止法を開発することを目的とし,試験1:高さの異なるポリエチレン製ネット柵(目合:6×6 cm)に対する飼育シカの行動反応から侵入防止に有効な柵の高さの検討および試験2:2008年10月から2009年1月に採草地に設置したネット柵と電気柵の野生シカ侵入防止効果を比較検討した. 1)飼育シカによる試験では,供試シカ3頭は高さ50および100 cmのネット柵を容易に飛び越えた.一方,高さ150および200 cmを提示した場合には,柵基部から高さ100 cmまでのネットに口唇や頭部で繰り返し探索する行動を示したが,ネット柵を飛び越えた個体は皆無であった. 2)1月における早朝(6:00~7:00)の採草地への野生シカ侵入調査では,電気柵(地上高30,60,100および140 cmの4段張り,瞬間電圧約4,000 Vのパルス電流)を設置した採草地(1 ha)に比べ,ネット柵を設置した採草地(1 ha)でシカ侵入頭数が少ない傾向がみられた.柵設置後3ヵ月目(試験終了時)における植物現存量は電気柵を設置した採草地に比べネット柵を設置した草地で有意に多かった(P<0.05). 以上より,高さ150 cmのネット柵を地面への固定を施して採草地周囲に設置することで高いシカ侵入防止効果が得られることが明らかとなった.
  • 高橋 俊浩, 小平 貴美子, 堀之内 正次郎, 岩切 正芳, 入江 正和
    2012 年 55 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
    弁当工場からのエコフィードの給与レベルが肥育豚の発育,枝肉,肉質特性に及ぼす給与レベルによる影響を検討した.エコフィードは乾燥で,パンくず主体(91%)とした.対照区には配合飼料を給与し,試験区にはエコフィードを25%,50%,75%,100%現物換算で混合した.平均体重69.2±0.4 kgの豚,計40頭を用い,市場出荷体重まで給与した.と畜後,肉質分析のために胸最長筋,背脂肪を採取した.肥育期間と飼料要求率は,対照区と比べ,50%,75%,100%エコフィード試験区で有意に高くなった.一方,飼料費は,対照区と比べ,50%,75%,エコフィード試験区で低下した.エコフィードの給与は,枝肉特性,脂肪交雑,脂肪酸組成を除く肉質に有意には影響しなかった.胸最長筋における脂肪交雑と粗脂肪含量は,50%レベル以上のエコフィード飼料給与によって有意に増加あるいは増加傾向にあった.以上の結果は,主にパン主体エコフィードが生産コスト低減に役立ち,給与レベルによって豚肉の脂肪交雑をコントロールするのに役立つことを示した.
  • 金子 真, 中村 好徳, 山田 明央
    2012 年 55 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
    パリセードグラスが出穂しない気候の地域において,イタリアンライグラス立毛中に不耕起播種したパリセードグラスの放牧条件下での生産の特徴を解明することを目的とし,不耕起播種区(リノベータ区)と耕起播種区(対照区)を各3区(1区:25 m×25 m)設け,発芽率,地上部現存量および植生を比較した.発芽率はリノベータ区の方が低い傾向を示し,イタリアンライグラス立毛中への不耕起播種では,播種工程が阻害される可能性が示唆された.初期生育はリノベータ区の方が耕起区に比べて劣り,イタリアンライグラスおよび雑草との競合による影響が考えられた.入牧時(播種56日目)のパリセードグラス地上部現存量は,耕起区の方がリノベータ区よりも多かった.入牧41日目以降,リノベータ区の方がパリセードグラス地上部現存量は多くなり,放牧牛による踏倒しは少なかった.また,9月中旬以降は気温の低下に伴って生育量が低下することも示唆された.
原著論文(短報論文)
  • Mitusru KAMIYA, Susumu MUROYA, Yuko KAMIYA, Toshihiko KAMADA, Masahito ...
    2012 年 55 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2012/07/02
    ジャーナル オープンアクセス
    The effect of high ambient temperature on myofibrillar proteolysis in high-yielding lactating cows was investigated. In a 2 x 2 crossover design, four multiparous lactating Holstein cows were maintained in a chamber under conditions of constant moderate ambient temperature (MT) or high ambient temperature (HT). Dry matter intake (P < 0.10) and milk yield (P < 0.10), and milk protein yield (P < 0.05) were lower in HT than MT. Urinary 3-methylhistidine excretion were 1.87 mmol/day in MT and 1.92 mmol/day in HT, but no statistically significant difference was found. Plasma 3-methylhistidine concentrations were higher (P < 0.05) in HT (6.9 nmol/ml) than MT (4.1 nmol/ml), indicating that high ambient temperature increased the myofibrillar proteolysis. The expression of muscle calpain SS (small subunit (28kDa)), -1, and -3, and calpastatin mRNA in HT were increased 1.4, 1.1, 1.6, and 1.4-fold of MT, respectively, but no statistically significant difference was found. Meanwhile, the correlation between the level of plasma 3-methylhistidine and the level of muscle calpain 3 mRNA was significant (P < 0.05) and its correlation coefficient was the highest in calpain family. In conclusion, high ambient temperature affected the plasma index of myofibrillar proteolysis related to the expression of muscle calpain 3 and calpastatin mRNA in high-yielding lactating dairy cows.
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