本研究では,ケージ単飼または群・平飼い条件下における特産肉用鶏「天草大王」(以下,天草大王)の骨格筋重量および筋線維特性をブロイラーと比較検討した.ブロイラーの剥皮体重,胸筋(M. pectoralis)および外側腸脛骨筋・寛骨臼後部(M. iliotibialis lateralis pars postacetabularis)の重量は,60および90日齢においてケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向を示し(P<0.1),とくに90日齢において顕著であった(P<0.05).また,天草大王についても,60,90および120日齢において胸筋重量はケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向を示し(P<0.1),とくに90日齢において著しかった(P<0.05).しかし,剥皮体重や外側腸脛骨筋・寛骨臼後部の重量は,各日齢とも胸筋ほど顕著な区間差はみられなかった.また,各骨格筋重量の剥皮体重比については,両鶏群とも,胸筋がいずれの日齢においてもケージ単飼区よりも群・平飼い区でやや大きい値を示し(P<0.1),とくに天草大王の60および90日齢において顕著であった(P<0.05).しかし,外側腸脛骨筋・寛骨臼後部に両鶏群とも各日齢で有意な区間差は認められなかった.ブロイラーでは60から90日齢,天草大王では90から120日齢にかけていずれも精巣重量の著しい増加が認められた(P<0.01).ブロイラーの胸筋のⅡR型およびⅡW型筋線維直径はケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向が認められた(P<0.1).一方,天草大王の両骨格筋のⅡR型筋線維構成割合は群・平飼い区で60から90日齢にかけて増加傾向を示し(P<0.1),60日齢の胸筋を除きケージ単飼区よりも群・平飼い区で有意に大きく(P<0.05),90および120日齢の胸筋のⅡR型筋線維直径についても同様であった(P<0.05).以上の結果から,天草大王の骨格筋の成長はブロイラーと同様,ケージ単飼よりも群・平飼いによって促進されるものの,外側腸脛骨筋・寛骨臼後部は肥育後期における精巣の著しい発達に伴い,飼育形態に関わらず,良好な成長を示すものと推察された.また,天草大王の筋線維特性はブロイラーと比べて飼育形態の影響を受け易く,群・平飼いによってⅡR型筋線維構成割合が増加するものと考えられた.