日本暖地畜産学会報
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55 巻, 2 号
日本暖地畜産学会報
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 六車 三治男
    2012 年 55 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
  • 津田 知幸
    2012 年 55 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の国内畜産の規模拡大は生産性の向上をもたらす一方で、伝染病などの家畜疾病による被害が増大するというリスクをはらんでいる。また、近隣諸国における家畜伝染病の多発はわが国への病気の侵入リスクの増大をもたらしており、口蹄疫の発生を機に改正された家畜伝染病予防法では国の防疫対策の強化とともに農場における衛生対策の強化も求められた。畜産先進国においては農場段階での病気の侵入防止は農場バイオセキュリティとして畜産経営の一部となっており、衛生対策の観点からばかりでなく、消費者に対して安全な畜産物を提供する手段ともされている。農場バイオセキュリティを実行するためには、感染症の成立要件である感染源、伝播経路および動物に対する対策を適切に組み合わせて実施する必要があり、これを着実に実施することが今後の健全な畜産の発展のカギになると考えられる。
  • 林 國興
    2012 年 55 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    焼酎粕は、水分が多いことを除けば、比較的良質の飼料原料であり、焼酎生産地帯においては昭和47年頃まで液状飼料として広く利用されてきた。焼酎粕の成分は原料によって異なるが、水分は、芋焼酎粕は約95%、麦焼酎粕は約92%、米焼酎粕は約92%である。乾物当りで示せばタンパク質が多く、水分を取り除けば、飼料原料として十分利用可能である。飼料として利用するためには乾燥が最適である。現在では、乾燥を効率的に行うために先ず連続遠心分離機(デカンター)やスクリュープレスにより固液分離が行われている。固液分離により、固体部分(ケーキ)が、芋焼酎粕では約85%、麦焼酎粕では約65%となり、乾燥が効率的になる。ケーキは乾物含量が焼酎粕原液の3倍以上に増加し、乾燥せずそのまま家畜に与えられる場合もあるが、粘性があり、重く、そのため重労働を強いられ、使用する農家は少ない。乾燥焼酎粕は配合飼料の副原料として、すでに、一般に用いられている。固液分離後の液体部分は水分約60%程度にまで濃縮してTMRやリキッドフィーディングの原料あるいは配合飼料原料として用いられる。濃縮することにより運搬や貯蔵が容易になるだけでなく保存性も良くなる。現在では、このような焼酎粕の加工形態が一般的になっている。また、焼酎粕には成長促進効果など各種の機能性があることが分かってきており焼酎粕の飼料利用を後押ししている。
  • 守田 智
    2012 年 55 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
原著論文(一般論文)
  • ジャーハン ローシャン, 松田 智恵, 松田 莉朋, 砂川 知絵子, ミザヌル ラハマン, 小原 瑛子, 阿南加 治男, 和田 康彦
    2012 年 55 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    烏骨鶏は古来より薬用鶏として珍重されており, 我が国でも高値で取引されているが, 就巣性があるため産卵率が著しく低く生産効率が悪い. 2番染色体上に位置するプロラクチンやVIP受容体遺伝子1, neuropeptide Y遺伝子などの候補遺伝子が就巣性や産卵率, 初産日齢に関連するという報告がある. これらの遺伝子マーカーによる改良の可能性を探るために, 産卵率で選抜された烏骨鶏選抜第5世代について各マーカーの遺伝子型判定を行い, 生産形質との関連性について検討した. その結果, 日齢体重や産卵率, 平均卵殻強度のすべての形質で父鶏の効果が1%水準で有意であったが, 候補遺伝子のマーカーの遺伝子型の効果は有意ではなかった. 分散分析での父鶏の効果が有意であることから, 大分県の烏骨鶏選抜集団においては, 産卵率の遺伝変異が残っており, さらなる選抜の可能性があることから, 産卵率などのQTLが検出されている領域などについて, さらに検討する必要があると考えられた.
  • Nafiatul UMAMI, 権藤 崇裕, 石垣 元気, Mohammad Mijanur RAHMAN, 明石 良
    2012 年 55 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,わい性ネピアグラスにおける効率的な苗生産を行うための組織培養法の改善を図り,また,苗生産において重要な課題である順化の効率化やソマクローナル変異の誘発などの問題を軽減したものである.外植体として用いた腋芽は,分げつから無菌的に摘出して,2,4-DおよびBAPを組み合わせて添加したMS固形培地で多芽体を誘導した.その結果,多芽体は0.1 mg L-1 2,4-Dおよび2.0 mg L-1 BAP添加の培地で29%と最も高い誘導率を示した.培養培地への硫酸銅の添加は,多芽体の増殖率を向上し,50 μMの硫酸銅の添加が増殖に最も有効であった.増殖した多芽体は,0.1 mg L-1 NAAおよび2.0 mg L-1 BAP添加のMS固形培地で84%と最も高い再分化率を示し,多くの植物体が再分化した.また,再分化植物体の全ては順化することができ,土壌中で旺盛に生長した.再分化植物体および栄養苗から生長させた植物体について形態を調査したところ,組織培養による形態的な変異は認められず,両者間に統計的な有意差(5%水準)はなかった.また,フローサイトメーターによる倍数性の調査では,再分化植物体における染色体数の倍加は認められなかった.以上のことから,本研究で改良した培養法により,わい性ネピアグラスの高品質な苗生産技術を確立できたものと判断した.
  • 溝口 由子, 髙山 耕二, 水本 明男, 中西 良孝
    2012 年 55 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    果樹園におけるガチョウの除草利用を図る上での基礎的知見を得ることを目的とし,ブルーベリー(Vaccinium ashei Reade) 園18aにガチョウ10羽(4~5ヵ月齢,平均体重2.6kg)を2009年9月から同年11月にかけて68日間放飼し,その除草効果について検討した.供試したブルーベリー園にはイネ科草本が多く存在しており,優占種はメヒシバ(Digitaria adscendens (H. B. K. ) Henr.)であった.放飼したガチョウはイネ科草本を他の植物種よりも選択的に採食する(P<0.01)ことが明らかになり,その一方でブルーベリーの樹皮・樹葉に対する採食は皆無であった.放飼終了時において,対照区(ガチョウ無放飼)とガチョウ放飼区との間で裸地率に差がみられなかったものの,放飼終了時におけるガチョウ区の植物現存量は対照区に比べ有意に低下した(P<0.01).以上より,ブルーベリー園におけるガチョウの放飼は,園内の下草管理に有効である可能性が示唆された.
  • 澤井 晃
    2012 年 55 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    抗酸化能がトウモロコシ茎葉の乾物分解率へ及ぼす影響を明らかにするため,紫トウモロコシ自殖系統と通常の自殖系統との一代雑種について,抗酸化能の指標であるDPPHラジカル消去活性とセルラーゼによるin vitro乾物分解率との関係を調査した.その結果,乾物分解率は抗酸化能と有意な正の相関を示した(r=0.450. P<0.001).その回帰係数は,分解された乾物の平均モル質量が,2,240 g/モルTrolox相当量であることを示した.抗酸化能測定に使った1%TFA抽出物は,セルラーゼで分解された乾物重の74%を占め,乾物分解率と直線的な関係にあった.1%TFA抽出物の加水分解物と薄層クロマトグラフィーはフェルロイル化糖類の存在を示し,その蛍光の強さは乾物分解率が高いほどまた抗酸化能が高いほど強かった.これらの結果は,紫トウモロコシの茎葉に含まれる抗酸化能により,通常は細胞壁の多糖類に酸化的に結合するはずのフェルロイル化糖類が可溶化するため,乾物分解率が増加することを示す.
  • 伊藤 秀一, 後藤 和, 神鷹 孝至, プラダン ラジブ, 作本 亮介, 岡本 智伸, 谷 峰人, 山本 直幸, 矢用 健一
    2012 年 55 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    搾乳時におけるジャージー牛の後肢に関係する行動(以下,後肢動作)およぼす搾乳者と恐怖性の影響を明らかにするために,搾乳経験が豊富である大学の技術員と,搾乳経験が少ない学生による搾乳時の後肢動作を比較するとともに,恐怖性の指標としての行動テスト(逃避反応,接触,新奇物および葛藤テスト)における各行動反応との関係を調査した.スタンチョン式牛舎で飼養されているジャージー種雌6頭に対して,朝夕の搾乳作業時に行動観察を行った.搾乳前の足踏み行動の発現回数は,朝および夕の両時間において学生区(7.1±7.1回および7.9±7.5回)に比べて技術員区(3.8±4.4回および3.6±3.2回)で有意に少なかった(P<0.05).一方,搾乳中の挙げ行動は,朝および夕の両時間において技術員区(1.2±1.9回および2.9±3.4回)に比べて学生区(0.5±1.0回および0.7±1.0回)で有意に少なかった(P<0.05).また,後肢動作と恐怖性との関係については,学生区における搾乳前の蹴り行動と新奇物テストにおける新奇物への接触回数との間(ρ=-0.892),搾乳時の挙げ行動と葛藤テストにおける摂食までの潜在時間(ρ=-0.926)との間にそれぞれ有意な相関が認められた(いずれもP<0.05)が,その他の行動テストの結果との関係は認められなかった.以上より,ジャージー牛は搾乳者によって異なる後肢動作を発現することが明らかとなり,その要因として搾乳者の熟練度および新奇性の関与が示唆された.一方で,後肢動作と恐怖性との関係は明確にはならなかった.
  • 手島 信貴, 柿原 孝彦
    2012 年 55 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    福岡県において,ホールクロップサイレージ(WCS)用イネ栽培の更なる普及拡大には,異なる早晩性品種の組み合わせによる適期収穫期間の拡大が有効と考えられる.広く普及している極晩生品種「タチアオバ」との組み合わせに適した早生品種の中で,九州地域に適した「まきみずほ」が近年開発された.この「まきみずほ」について,栽培試験および気候条件による作業リスクの評価を行い,従来からの早生品種「ホシアオバ」と比較した収量性,耐倒伏性,飼料適性等の有利性や,気候条件を考慮した適期収穫期間の拡大効果を検討した.その結果,以下の点が考えられた.1)「まきみずほ」は「ホシアオバ」より耐倒伏性や飼料適性が優れている可能性がある.2)「まきみずほ」と「タチアオバ」の作付面積比は,気候条件を考慮すると4:6とするのが望ましく,「まきみずほ」の活用により適期収穫期間は「タチアオバ」単作時の1.7倍の34日間に拡大できる.
  • 仁木 隆博, 佐伯 祐里佳, 家入 誠二, 米田 一成, 荒木 朋洋, 芝田 猛
    2012 年 55 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,平飼いおよび単飼ケージの飼育形態の違いが,特産肉用鶏「天草大王」(以下,天草大王)の成長,産肉性および脂肪蓄積に及ぼす影響について,ブロイラーとの比較により検討した.天草大王の体重は,平飼い区および単飼区ともに,15日齢以降,ブロイラーに比べ低い値で推移した.両鶏種の飼料要求率は,それぞれ両区ともほぼ同様な値で推移したが,天草大王では85~92日齢以降,両区ともに急激に上昇し,飼料の利用性が悪化した.また,両鶏種ともに,平飼い区は単飼区よりも良好な体重増加を示し,骨格筋重量も平飼い区の方が高い値となる傾向がみられた.しかし,剥皮体重比(相対値)では,両区ともほぼ同様な値となった.天草大王では,総骨格筋重量に対する後肢部骨格筋の占める割合が,ブロイラーに比較して有意に高い値を示した.一方,天草大王およびブロイラーはともに,両区において,腹腔内脂肪などの不可食の脂肪量が日齢の経過に伴い増大し,平飼いによりその蓄積量が抑制されることはほとんどなかった.以上のことから,天草大王は特産肉用鶏の特徴である骨格筋,とくに,後肢部骨格筋の成長に優れていることが明らかとなった.さらに,天草大王はブロイラーと同様に飼育形態の影響を受けやすく,平飼いにより体重増加や骨格筋の成長が促されるものと推察された.また,天草大王は,腹腔内脂肪などの脂肪蓄積を抑制させる方策や飼料効率を考慮した出荷日齢を再検討する必要があるものと考えられた.
  • ―ブロイラーとの比較―
    仁木 隆博, 佐伯 祐里佳, 家入 誠二, 椛田 聖孝, 米田 一成, 荒木 朋洋, 芝田 猛
    2012 年 55 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,ケージ単飼または群・平飼い条件下における特産肉用鶏「天草大王」(以下,天草大王)の骨格筋重量および筋線維特性をブロイラーと比較検討した.ブロイラーの剥皮体重,胸筋(M. pectoralis)および外側腸脛骨筋・寛骨臼後部(M. iliotibialis lateralis pars postacetabularis)の重量は,60および90日齢においてケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向を示し(P<0.1),とくに90日齢において顕著であった(P<0.05).また,天草大王についても,60,90および120日齢において胸筋重量はケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向を示し(P<0.1),とくに90日齢において著しかった(P<0.05).しかし,剥皮体重や外側腸脛骨筋・寛骨臼後部の重量は,各日齢とも胸筋ほど顕著な区間差はみられなかった.また,各骨格筋重量の剥皮体重比については,両鶏群とも,胸筋がいずれの日齢においてもケージ単飼区よりも群・平飼い区でやや大きい値を示し(P<0.1),とくに天草大王の60および90日齢において顕著であった(P<0.05).しかし,外側腸脛骨筋・寛骨臼後部に両鶏群とも各日齢で有意な区間差は認められなかった.ブロイラーでは60から90日齢,天草大王では90から120日齢にかけていずれも精巣重量の著しい増加が認められた(P<0.01).ブロイラーの胸筋のⅡR型およびⅡW型筋線維直径はケージ単飼区よりも群・平飼い区で大きい傾向が認められた(P<0.1).一方,天草大王の両骨格筋のⅡR型筋線維構成割合は群・平飼い区で60から90日齢にかけて増加傾向を示し(P<0.1),60日齢の胸筋を除きケージ単飼区よりも群・平飼い区で有意に大きく(P<0.05),90および120日齢の胸筋のⅡR型筋線維直径についても同様であった(P<0.05).以上の結果から,天草大王の骨格筋の成長はブロイラーと同様,ケージ単飼よりも群・平飼いによって促進されるものの,外側腸脛骨筋・寛骨臼後部は肥育後期における精巣の著しい発達に伴い,飼育形態に関わらず,良好な成長を示すものと推察された.また,天草大王の筋線維特性はブロイラーと比べて飼育形態の影響を受け易く,群・平飼いによってⅡR型筋線維構成割合が増加するものと考えられた.
原著論文(短報論文)
  • 丸居 篤, 水野 谷航, 中野 豊, 城内 文吾, 友永 省三, 清水 邦義, 泉 清隆, 堀江 ちひろ
    2012 年 55 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    地域資源としての野生イノシシの利用推進を図るために,福岡県糸島市で捕獲された野生イノシシおよび対照としてブタのソーセージを作成し,理化学的特性の測定と,一般消費者を対象に食味試験を行った.理化学的特性測定の結果,肉以外同一の材料と組成で作成した場合,イノシシ肉ソーセージはブタ肉ソーセージに比べ加熱損失が40%と著しく低く,加圧保水性は2倍以上であったため多汁性に富んだジューシーな食感を維持しやすいと推測された.食味試験ではブタ肉ソーセージとイノシシ肉ソーセージに加え,香辛料を添加したイノシシ肉ソーセージの計3種類を用意し,92名による評価を行った.食味試験の結果からも「ジューシーさの好み」でイノシシ肉ソーセージは高い評価を受けた.破断応力と剪断力価はイノシシ肉ソーセージの方が高く,ブタ肉ソーセージより固いと考えられたが,消費者はイノシシ肉ソーセージの固さを好んだ.食味試験の結果「総合的な好み」では,ブタ肉ソーセージを基準として-5点から5点までの評価を調べた結果,通常のイノシシ肉ソーセージで+1.7点,香辛料を添加したイノシシ肉ソーセージで+2.3点となり,イノシシ肉ソーセージはブタ肉ソーセージより好ましいという結果が得られた.本研究の成果はイノシシ肉の利用方法として有効であり,今後の利活用に寄与できるものと考えられる.
原著論文(技術報告)
  • 中村 好徳, 金子 真, 林 義朗, 莟 博行, 山田 明央
    2012 年 55 巻 2 号 p. 181-194
    発行日: 2012/09/28
    公開日: 2012/12/29
    ジャーナル オープンアクセス
    褐毛和種去勢雄牛(4頭,8~9ヵ月齢)を用いて,配合飼料無給与で暖地型牧草(バヒアグラスなど)放牧地と寒地型牧草(イタリアンライグラス)放牧地で周年放牧育成(草地育成期間:293日)後,放牧を続けながら自家産のサイレージ(トウモロコシと大豆の混植)を併給する肥育方法により飼養(草地肥育期間:248日)し産肉性と肉質を調査した.放牧期間中の1日増体量は,草地育成期間で0.35 ±0.03 kg/日,草地肥育期間で1.02 ±0.10 kg/日であった.供試牛の血液性状は飼料成分(特に生草)の変化に顕著な影響を受け,季節変動が激しかったが正常値範囲内の変化に留まった.供試牛は26.8 ±1.0ヵ月齢で体重676 ±50 kgで出荷され牛枝肉格付評価はB-2であった.また,屠畜後の内臓廃棄率は0%であった.本研究で調査された食肉科学および栄養学的データを他の慣行肥育牛のデータと比較検討することにより,褐毛和種去勢雄牛の草地肥育牛は,1)産肉性として,‘まえばら’と‘そともも’の発育が良好であること,2)肉質として,ほとんどの部分肉の脂質含量が和牛肉と乳用肥育牛肉の間に位置すること,β-カロテン含量が高くコレステロール含量と脂肪酸組成のn-6系多価不飽和/n-3系多価不飽和比率が低いことが明らかになった.これらのことから褐毛和種去勢雄牛の草地肥育における産肉性や肉質の特徴が明らかになった.
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