分娩後の子宮炎症は,肉用牛の繁殖成績に大きく影響する重要な要因である.本研究は,黒毛和種における分娩後の子宮内炎症と母牛および子牛の体尺測定値との関係を調査することを目的とした.経産牛20頭とその新生子牛を対象とし,母牛では体高,腰角幅,坐骨幅,寛幅,尻長,子牛では顔面寸法および前肢などの外部計測を行った.分娩後1,3,5,7週に,サイトブラシ法を用いて子宮内膜サンプルを採取し,炎症の指標として多形核好中球の割合(PMN%)を測定した.外部骨盤測定項目のうち,尻長のみが1週および3週時点のPMN%と有意な非線形関係を示した.尻長が極端に短い,あるいは長い母牛では,1週から3週にかけてPMN%が減少する傾向がみられ,炎症の収束が示唆された.また,子牛の顔幅や肢長もPMN%の水準や週ごとの変化量と有意な相関を示した.これらの結果は,簡便かつ非侵襲的な体尺測定値が分娩後の子宮炎症の推移を評価する指標となりうることを示している.特に,PMN%の週ごとの変化量(例:Δ1–3w,Δ3–5w)をモニタリングすることで,単一時点での測定よりも子宮回復の状態をより包括的に評価できる可能性がある.本手法は,子宮回復遅延リスクのある母牛の早期同定と,黒毛和種繁殖群における繁殖管理の支援に貢献することが期待される.
日本暖地畜産学会報:69(1):31-40,2026