抄録
近年、農業水路・都市水路などの地域の水路網に流水を引き入れて環境用水を創出し、身近な水環境を再生しようとする取り組みが全国的に進展している。2005年1月に宮城県仙台市は、農業水路である六郷堀・七郷堀に環境用水の水利権を取得した。これを受け国土交通省は、2006年3月に「環境用水に係る水利使用許可の取扱い基準の策定」を発表した。その後、環境用水水利権の取得は5事例を数えている。また、「二ヶ領用水(神奈川県川崎市)」や「鞍月用水(石川県金沢市)」のように、河川維持用水や農業用水が環境用水と同様の機能を果たしている事例もある。本研究は、こうした先進的な取り組み事例について現地調査を実施し、環境用水が成立した要因を分析した。その結果、14の成立要因が抽出された。調査対象地区のすべてで該当した項目は、直接的な要因、関係機関の連携、管理主体、管理費用であり、環境用水の導入にあたって重要な要素であることが示唆された。また、環境用水の導水が持続する地域では、水路の周辺に居住する住民だけでなく、広い層の市民によって支えられていることがこうした事例から明らかになった。