抄録
IPCCが2014年11月に第5次評価報告書(AR5)を公表した。本論文はこれをふまえ、気候変動に関する最新の知見をもとに、対応が遅れている発展途上国のうち、とくにメコンデルタ地域における適応策について、そのあり方を考察するものである。IPCCはAR5のなかで、適応策としてガバナンスの強化やよりいっそうの財政的支援の拡充を強調している。しかし一方で、メコン河下流域諸国は貧困からの脱却を目指した経済成長を最重要視した発展戦略を推し進めており、気候変動に対する適応策は先進国や国際機関からの援助に依存しがちである。メコンデルタ地域では、2100年には海面が1メートル以上上昇するという予測も出ていることから、上流に位置するラオス、タイ、カンボジアとの情報交換と緊密な連携が求められる。