抄録
1975年当時、中国房幹村で貧困からの脱出と発展を目指して開始した貯水、植樹(環境保全)、田の整備(生計を立てる手段)、道路開通(インフラ整備)は、いずれも村の安定的で持続的な発展を支えるために必要不可欠な要素である。しかし、実現が困難な課題として山積している地域が世界には少なくない。森林被覆率をみると、2019年、中国の森林被覆率は約20%である一方で、房幹村は約90%であり、村の森林がいかに高い数字で維持拡大されてきたかがわかる。村の林権にも特徴があり、生態公益林を村の集団所有とするほか、果樹農家による経済林経営という個人の裁量が可能な空間にも一貫した集団所有の村としての特色が現れている。集団所有の村の村長の強い統率力と村民の強固な団結、またそれによるこれまでの発展の実績があるため、時代の変化や様々な政策の変化を経た今日もなお集団所有の村として房幹村は機能し、発展を続けているといえる。