抄録
中国では、水資源の稀少化に加えて、工業化や都市化の進展に伴う水質汚染が深刻化している。このような状況を受け、中国政府は様々な施策を実施するとともに、行政以外の主体との連携も重視するよう変わりつつある。しかし、住民との管理権の共有を望まない地方自治体の姿勢は、環境団体の発展や独立性を阻害していることなどが課題として指摘されている(鄧ほか2023、相川2012)。本研究では、中国国内で最も長期間、工場排出汚染物質のモニタリング活動に取り組む社会組織である緑色江南に着目し、その活動概要と行政などとの関係性を明らかにすることを目的としてインタビュー調査を行った。その結果、緑色江南は一定の独立性を持って活動し、各地域の住民から信頼を得て中国全土で住民参加を拡大し、企業(工場)の持続可能な発展を促進していることが示唆された。さらに、行政との関係性は対立から協力に変化し、現在、地方自治体・企業(工場)・住民との信頼関係および互恵的な協力関係を構築していると考えられる。