水資源・環境研究
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特集
里海づくりとコモンズの復活
松田 治
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2024 年 37 巻 2 号 p. 43-

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抄録
里海という言葉と概念が、初めて提唱されたのは1998年である。その後、現在までの20数年間に、里海づくりの実践活動は日本全国に広まり、里海の考え方が多くの国内政策に取入れられたのみならず、日本発の新たな沿岸域管理手法Satoumiとして、国際的にも注目されている。里海の当初の定義は、「人手が加わることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」であったが、近年では、「人が自然と調和的に暮らしている沿岸海域」などと解釈されている。しかし、人と海との距離は、埋立てなどの沿岸開発や社会の変化で物理的にも心理的にも遠くなり、人々の「海離れ」は大きな課題である。  瀬戸内海では、人々が最も海に親しみやすいコモンズとしての自然海浜は、開発で大幅に失われ、多くの人が暮らす都市域では極めて稀なものとなった。近年の多くの里海づくりでは、産・官・学・民など多様な連携による自然再生や地域振興が推奨されている。この背景には自然共生サイトや地域循環共生圏の構築もあるので、里海づくりは、沿岸域コモンズの復活に寄与することが十分に期待できる。
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© 2024 水資源・環境学会
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