2017 年 17 巻 8 号 p. 379-385
ラマン分光法は,測定対象試料に光を照射した際に発生する,照射光とは異なる波長の非常に弱い散乱光を分光して得たスペクトルを解析することにより,測定試料の定性的又は定量的評価を行う分光学的方法であり,前処理なしに迅速で非破壊的に試料を測定できる利点をもつ。医薬品分野における本法の応用としては,原薬及び製剤中の有効成分,添加物について定性的又は定量的評価を行うことができる。また,結晶形・結晶化度などの物理的状態の評価に用いることもできる。また,顕微手法を用いることにより製剤中の有効成分・添加物の分布評価を行うことができる。さらに光ファイバーを用いることにより,装置本体から離れた場所にある試料について,サンプリングを行うことなくスペクトル測定が可能であることから,医薬品の製造工程管理をオンライン(又はインライン)で行うための有力な手段としても活用することができる。本稿では,ラマン分光法を利用した製剤評価の応用例について解説する。