抄録
2020年7月上旬にかけて熊本県八代・球磨地方は記録的な豪雨に見舞われ、60人超の犠牲者を出した。豪雨災害の原因は九州南部に発生した線状降水帯である。人吉市では20人が亡くなったが、堤防損壊で死者5人を出した下薩摩瀬町地区や、堤防決壊で全域水没したけれども死者ゼロの中神町大柿地区があった。後者は早朝から避難支援を行いながら避難指示発出前に避難を完了したが、前者は同発出2時間後個々に避難している。大柿地区の避難支援を可能にした要因は、防災・避難対策の前に福祉政策に取り組み、日頃から地区の支え合いと役割分担ができていたからである。この地区の理念と仕組みは、行政の支援と相まって地区の歴史が育んだもの、と考える。