1999 年 1999 巻 12 号 p. 29-34
建設省の巨大可動堰計画に対して、徳島県の住民は住民投票条例を制定するなどの取り組みを通じて事業強行に歯止めをかけている。住民がそのような運動を進めた原因は、第1には建設省の計画のずさんさにあり、第2には事業者の強引な推進姿勢にある。このような地域的混乱を解決するためには、事業の構造を住民との対話を軸とした型に転換することが不可欠である。
新たな河川法に基づき、建設省が「コミュニケーション型行政」を掲げていることは、その点で歓迎すべきである。ただし、それは現時点では宣言的なものにとどまり、新たな対応は認めうるが、依然として権力行政的色彩が基調となっている。その本格的転換のためには、住民運動の一層の展開が必要である。吉野川可動堰の事例を踏まえて、河川行政転換の到達点を検討しよう。