1999 年 1999 巻 12 号 p. 18-28
河畔域(riparian zone)は流域全体の約5%程度を占めるに過ぎないが、陸域生態系と水域生態系の接点として中間的に位置し、河畔域に存在する河畔植生(riparian vegetation)は、他の地域で見られる一般的な陸域植生とは区分できる独特な生活パターンをもっている。特に水資源保護のために重要な空間である上流域では、河畔植生がもっている機能的な面が強調、評価されている。
日光国立公園に見られるように、近年利用頻度がだんだんと高まりつつある国立公園内の河畔域においては、都市河川で見られるような人為的影響ばかりではなく、野生動物による河畔植生に及ぼす影響も大きいと考えられる。そこで本研究は、国立公園内の河川上流域で保全生態学的側面から、河畔植生の保護および管理面で河畔域の利用を高めるため、河畔林の種組成の特徴と河畔植生に及ほす人為的および野生動物の影響(以下外部的影響)の程度を現地調査により区分・分析した。