抄録
水のある空間は、様々な機能を有しており、それらの多くは人間の身体感覚(認識)を拡張し、同時に人間の行動の可能性をも拡張すると考える。このように拡張された感覚と行動は、環境への働きかけの媒介としての人間の身体性、あるいは環境の受容器としての人間の身体性の意味を拡張するといえる。そして、この身体性の拡張は、身体を通して解釈される環境の像にも影響を与えると考えられる。
そこで、本研究においては、水のある空間が作り出す機能のうち人間の身体に関連するものを整理あるいは総括した上で、それぞれの機能を必要な空間的要因や社会的要因などと関連づけることによって、都市における身体性拡張装置としての水のある空間の意義を指摘したい。なお、議論においては、近江八幡市の八幡堀や兵庫県三田市の都市近郊のため池群などを対象とした現地調査やアンケート、ヒアリング調査などを事例に進めてゆく。