今世紀、国際社会は「水の危機」に直面している。近年この問題に対処するために各方面から努力がなされているが、1つのオプションとして、水資源を国際的に自由に取引できる体制が、その効率的利用と配分に役立つとする見解がある。しかし水を越境して大量に輸出または輸入することになると、その実現可能性はもとより様々な問題が生じよう。水の取引が国際的に可能だとすると、いかなる種類の水が国際経済法の適用を受けるのか、国際市場において水資源の保護と環境に配慮した取引は可能なのか、果たして国家は水の取引によって経済的に改善されうるのか、また各国はどの程度まで水資源の取引に関し主権を及ぼすことができるのか。本稿ではとりわけ、国際取引における「水」の法的位置づけについて、カナダの事例を取り上げつつ、国際取引を究極的に規制するGATT/WTO法のコンテクストで論じてゆく。