抄録
地域における持続的開発を可能とするような環境政策の決定過程において、市民参加は不可欠である。そして、環境政策過程における市民参加の手段は、そのコミュニティ全体の人口統計的な姿を表すような市民の集団が、情報を十分に与えられ、互いに十分に議論をした上で、政策に対してある程度の拘束力のある勧告を行うことができるようなものであるべきである。
しかしながら、現在一般的に行われている世論調査や市民会議等の市民参加の手段は、そのような条件を溝たしていない。したがって、現在新たな市民参加のための手段が必要とされているのだが、その有力な候補に市民陪審がある。本稿では、この市民陪審が、環境政策決定過程における市民参加の手段として、望ましいものであるかについての検証を、カタロニアでの市民陪審のケースを用いて行う。そして、その検証の結果により、いくつかの課題や改善すべき点はあるが、市民陪審は、既存の市民参加の手段に比べて、望ましい市民参加の手段としての条件を満たしており、よりよい市民参加の手段であることが明らかとなる。