2025 年 51 巻 2 号 p. 49-60
深浸潤処理の適用可能材料を拡大するため,代替インサイジング手法としてドリル加工を検討する目的で,スギ(Cryptomeria japonica)および乾燥履歴の異なるカラマツ(Larix kaempferi)の心材部に種々のインサイジング加工を施し,深浸潤薬剤の浸透性を評価した。ツイストドリルでインサイジング加工したスギは既存のフラット刃による加工材と同等の薬剤浸潤面積を示した。また,繊維飽和点以下でスギ材の含水率を複数設定すると,含水率を11.3%に調湿した試験体と比べ16.5%,19.2%に調湿した試験体では薬剤浸透が明確に阻害されたため,細胞壁内もしくは近傍を経由する薬剤浸透メカニズムの存在が示唆された。カラマツ材の薬剤浸透においても繊維飽和点以下の含水率依存性が現れたため,スギと類似の薬剤浸透メカニズムが示唆された。また,インサイジング方法によっては蒸煮乾燥が浸透性を促進し,カラマツ蒸煮材ではドリル加工がフラット刃による加工と同等の浸潤面積を示した。これらの結果より,ドリル加工が深浸潤処理の代替インサイジング手法として有望であることが明らかになった。