木材保存
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ビフェントリンのイエシロアリに対する防蟻効果(II)
和田 恭弘池田 道彦榎 章郎
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1994 年 20 巻 2 号 p. 63-71

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抄録
合成ピレスロイド系化合物であるビフェントリンのイエシロアリに対する防蟻効果について,前報に続いて室内及び野外での検討結果を報告する。さらに,コンクリート打ち土壌中での安定性と気中濃度の測定結果についても述べる。ビフェントリンを1ppm相当処理した土壌における残効性は,山土では2年間にわたりすぐれ,残存濃度も高水準で維持された。一方,鹿児島の野外試験地土壌,河内長野埴壌土及び栃木火山灰土では,10ppm処理で効果が維持されたが,1ppm処理では残存濃度が高水準であったにもかかわらず効果が低下した。土壌吸着の様相が土壌種によって異なり,ビフェントリンの残効性に差が生じたことが示唆された。コンクリート打ち土壌中におけるビフェントリンの残存率は,50℃の耐候操作1ケ月保存で,室温保存1ケ月の場合よりも低下の程度が大きかったが,比較的高水準に留まっていた。ビフェントリンはアルカリ性で分解しにくく,コンクリート工法においても問題は生じないと考えられた。鹿児島県吹上浜における野外試験の土壌処理(箱型容器による床下法)では,0.05%で5年以上有効と考えられた。木部処理(杭試験)では,0.025~0.1%で4年間有効であったが,本試験の場合,木杭の腐朽により5年以降の防蟻効果の判定は不可能であった。また,木造建築の民家の床下への土壌処理で,ビフェントリン乳剤の実用濃度(0.05%)処理で,散布直後及び2時間後の時点で,気中濃度は検出限界以下であった。このことにより,本剤は吸入毒性による障害の恐れが極めて小さいことが示唆された。以上の結果からビフェントリンは,防蟻剤として低薬量で実用性の高い化合物であり,揮散による使用者への障害の恐れも少ないと考えられた。
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