木材保存
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アクリルコポリマー処理した木材の生物劣化抵抗性(第2報)
安定化剤の抵抗性向上に及ぼす影響
藤村 庄柳 在潤井上 守正今村 祐嗣古野 毅城代 進
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1994 年 20 巻 2 号 p. 72-80

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抄録
合成樹脂安定剤としてジブチルチンジラウレート(DBT-DL)を含むアクリルコポリマーによる複合化木材の褐色腐朽菌,白色腐朽菌及びシロアリ食害に対する抵抗性について検討し,さらにこの複合体の安全性についても併せて検討した。
DBT-DLは微量でも木材中に存在すると,オオウズラタケやイエシロアリに対する抵抗性に大きく寄与した。しかしカワラタケに対してはその腐朽防止効果は相対的に小さく,腐朽を完全に阻止するためには木材1g当り4.994mg以上を要した.
架橋したコポリマーにDBT-DLが共存する場合の複合化木材では,オオウズラタケやシロアリに対するDBT-DLの毒性は緩和されるが,6.075mg/gのDBT-DLを存在させることで劣化を抑制できた。
この条件ではイエシロアリの食害率は10%以下であった。一方,カワラタケではDBT-DLに関係せず,細胞壁内面のコーティング効果により腐朽を防止できると考えられる。
コポリマーと共存しないDBT-DLは含浸された部分の大半が蒸留水に溶出したが,コポリマーと共存する場合は蒸留水への溶出は見られなかった。それゆえ,DBT-DLを用いる場合は,生物劣化抵抗性が若干低下しても,溶脱防止の観点からコポリマーとの併用が必要であると結論した。
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© 社団法人日本木材保存協会
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