2007 年 53 巻 6 号 p. 306-312
伝統木造構法において,継ぎ手,仕口部の長期における緩みとクリープの発生は剛性の低下などをもたらす無視できない問題である。本研究では,伝統的な金輪継ぎ手接合部のクリープ性状を把握し,向上させる事を目的として,込み栓材としてスギ圧縮木材を導入し,その変形回復特性を利用して接合部の抗クリープ性能を向上させることが可能かどうかの検証を行った。
実験の結果,シラカシ込み栓挿入金輪継ぎ手の接触応力は,挿入直後から大幅に減少し,周期的湿度変化により19%まで低下しその後も減少傾向にあったが,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部は,湿度変化を受けても59%を維持し,長期に亘り接合部の剛性を維持することが明らかとなった。一方,継ぎ手接合部のクリープ撓みは,湿度変化第3期目からシラカシ込み栓挿入型において徐々に増大したのに対し,スギ圧縮込み栓挿入型では,全周期においてクリープの増大が見られなかった。高密度に圧縮されたスギ圧縮材は横圧縮応力緩和の発生を抑えることができ,その回復特性と合わせて,大きな横圧縮応力を持続的に受ける耐圧特性に優れた接合具であることが確認された。