2008 年 54 巻 4 号 p. 199-207
本研究では,地域の気候・風土に適した地産地消による家づくりの普及を最終目的として,地域に根づいてきた伝統構法による木造住宅を調査した。その中で,調査建物にみられた差鴨居構造,貫構造,格子組構造についてせん断耐力試験を行った。3つの伝統木構造は,いずれも試験を行った0.15 radまで耐力を維持しながら大変形を呈した。標準的試験法に基づいて得られた壁倍率は,差鴨居構造試験体では0.46,貫構造試験体では1.31,格子組構造試験体では0.96となり,このような評価基準ではその性能が結果的に小さく見積もられることになると考えられた。そこで,伝統木構造の性能評価の一方法として,構造体とその枠組のみのせん断耐力試験結果から仕口1個あたりの平均的性能を評価し,終局モーメントは差鴨居仕口1.90 kNm,貫仕口1.46 kNm,格子組仕口4.40 kNmであった。