抄録
北海道産人工林材のトドマツ製材とカラマツ合板を用いた木質I形梁(道産I形梁)の力学特性に及ぼす使用環境の影響を調べるために,種々の劣化処理(高湿度,浸せき,防腐,煮沸,減圧加圧)を施した試験体の曲げ,せん断,めり込み試験を行い,それぞれ常態試験体と処理試験体の特性値を比較した。高湿度処理では,約4%の含水率増加に対して曲げ耐力,せん断耐力,めり込み強さ,曲げ剛性は約1割低下し,せん断試験の曲げ剛性は合板の吸湿特性により約2割低下した。浸せき処理と防腐処理では,いずれの特性値も高湿度処理より性能低下が小さく,乾燥状態に戻れば吸水や薬剤塗布による影響は小さいことが示された。煮沸と減圧加圧処理では,曲げ耐力よりせん断耐力のほうが大きく低下する傾向が示された。せん断性能の比較では,防腐,浸せき,高湿度,減圧加圧,煮沸処理の順に残存率が小さくなり,I形梁の梁幅が大きいほど,劣化処理の影響が大きいことが明らかとなった。得られた残存率は使用環境に応じた調整係数として,または,接着性能の品質管理データとして活用される。