2025 年 71 巻 1 号 p. 36-42
木材利用の拡大を検討する上で,公共建築物の木造化および木質化(木造木質化)は重要である。市区町村の本庁舎建設を対象に,その森林率および林業関連部署の有無が本庁舎の木造木質化に及ぼした影響を整理するとともに,市区町村における本庁舎建設の際の木造木質化の主要な論点を検討した。対象とした市区町村を木造,木質化,非木質化グループに分類した結果,全体の10.4%が木造化グループ,83.2%が木質化グループ,6.4%が非木質化グループとなった。グループ間の比較を行った結果,森林率が高く,林業関連部署を有する市区町村の方が積極的に本庁舎の木造木質化に取り組んでいた。本庁舎建設に関する委員会等の議事録を計量テキスト分析した結果,本庁舎の建設に際し,林業振興の観点から地域材の活用が期待されるが,地域材の調達に時間を要する点,木造の耐震性,防耐火,免震性能,建設費用への懸念が課題として挙げられた。