福祉社会学研究
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Print ISSN : 1349-3337
【特集論文】 規範的探究の学としての福祉社会学の可能性
サードセクター研究の「第三ステージ」
サードセクター組織と規範性をめぐって
米澤 旦
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2016 年 13 巻 p. 28-41

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抄録

 本論の目的は,サードセクター研究におけるサードセクター組織と規範性の

関係性をたどることである.サードセクター研究は規範的なものとなりがちで

ある.これは,サードセクター組織自体が何らかの規範的目的を追求し,研究

もサードセクターの規範的立場に自らを重ねあわせてきたためである.多くの

場合,サードセクターが体現する規範性は一元的なものと想定された.しかし,

セクター境界の曖昧化とセクター内部の多元化により,そのような前提の揺ら

ぎは顕在化している.本論では,サードセクター研究の変化をたどることで,

柔軟な組織形態と規範性を分析する枠組みを検討する.本論の主張は,サード

セクター研究における組織形態と規範性の結びつきは3 つのステージに分ける

ことができるというものである.1990 年代までの研究は,セクター本質主義

を前提とする考え方(本論では「第一ステージ」と呼ぶ),原理の媒介をサー

ドセクターに見出す考え方(本論では「第二ステージ」と呼ぶ)に区分でき,

さらに,近年では,制度ロジックという枠組みを用いた,サードセクター研究

の「第三ステージ」とも呼べるような研究がみられている.組織形態と規範性

を柔軟に分析することに,「第三ステージ」の研究の意義がある.これらの検

討は,社会給付のサービス化が進行するなかで,福祉にかかわる組織のより良

き理解に貢献するものであり,福祉社会学の規範的課題を解くうえでも重要な

作業である.

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