1980 年代後半に注目された住民参加型福祉活動の制度化の過程について,
NPO 法人と関連づけながら,「社会文化的な意味における制度化」,「法律的な
意味における制度化」,「行政システムに参加することによる制度化」の3 点に
基づいて検討した.そして,「法律的な文脈における制度化」と「行政システ
ムに参加することによる制度化」の相乗効果があったことと,その背景には福
祉国家の変容が関わっていることを論じた.いっぽう「社会文化的な意味にお
ける制度化」は,未完の状態にあると考えられた.さらに以上の経緯を経て,
市民の福祉的な活動は「制度化」からは距離を置く道筋を選択しつつあるよう
に感じられ,その動向を整理した.以上の検討の過程では,国際的基準に従え
ばNPO に該当し,福祉的活動に長らく従事してきた社会福祉法人にも言及し,
住民参加型福祉活動がたどった経緯は,社会福祉法人の民間組織としての自立・
自律性に問いを投げかけるものでもあることを指摘した.