福祉社会学研究
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┃自由論文┃
なぜ献血を重ねるのか
受血者不在の場合の献血動機と消極的献血層の動機変化
吉武 由彩
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2020 年 17 巻 p. 159-180

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抄録

献血により提供された血液は,検査・加工されて各種血液製剤になり,医療機関において患者の治療に用いられる.このとき,血液製剤を使用する患者は「受血者」と呼ばれる.先行研究では,家族や友人など周囲に受血者がいることが,献血を促すという指摘がなされることが多い.他方で,家族や友人に受血者がいない場合でも,献血を重ねる人々がいるが,このような人々に着目した研究はほとんど見られない.そこで,本研究では,家族や友人に受血者がいない人々(「受血者不在」の場合)を対象に,献血動機の分析を行うことを目的とする.

 聞き取り調査の結果,初回献血動機と献血継続動機において共通して,献血によって「役に立つ」,家族や友人等における献血者や医療関係者の存在,いつか自身や家族が輸血を受ける時のために,といった動機が語られた.献血継続動機としては,健康管理も語られた.また,初回献血動機として「なんとなく」や「興味本位」と語る場合が見られたが(消極的献血層),これらの人々は,献血継続動機としては,「役に立つ」や健康管理へと変化していた.献血を重ねる人々を増やすには,人々が「なんとなく」であっても,献血へのきっかけを持てるようにすることが重要と考えられる.加えて,今回の対象者の初回献血時の年齢は,その多くが24 歳以下であったことから,24 歳以下の人々をターゲットとした献血推進も重要と考えられる.

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