2021 年 18 巻 p. 175-194
本研究の目的は,高齢の親に対する子世代からの実践的援助がどのようなパ
ターンを形成しているかを明らかにすることである.特に,子世代の誰がケア
を担いやすいのか,公的介護サービスの利用は子世代からのケアの内容とどう
関連しているのか,という2 点を掘り下げる.分析には「全国高齢者パネル調
査」(JAHEAD)のデータを用い,回答者と子世代からなるダイアドデータを
作成した.分析においては,「援助なし」「身体的介護を提供」「家事・生活的
援助のみ提供」という3 つのカテゴリをアウトカムとしたマルチレベル多項ロ
ジスティック回帰モデルによる推定を行った.分析の結果,回答者からみた続
柄では,娘によるケア提供の確率が高かった.また,親の性別の効果は,2 つ
のアウトカムで異なっていた.父親と比べ母親に対しては,子世代は身体的介
護を提供する確率が低く,また家事・生活的援助のみを提供する確率が高いこ
とが示された.次に,タスク別に分けると,身体的なケアの提供確率に対して
は在宅の公的介護サービスの利用が正の相関を持っていたが,家事・生活的援
助のみを提供する確率に対しては公的サービスは明確な効果が確認できなかった.